【AIを入れても社長の迷いが消えない理由】中小企業に必要な判断基準の作り方
「AIを入れれば、判断も速くなると思っていました」
経営支援先の経営者の方から、投げかけられた言葉です。
ChatGPTを試し、資料作成のたたき台も任せてみた。
ですが、最終的に決める場面になると、以前と同じように迷ってしまう。
こうした声を、ここ数か月で複数回、耳にしています。
中小企業でAI導入が進むほど、この矛盾が表に出てきているように感じます。
なぜ、便利な道具を手にしても、社長の迷いは消えないのでしょうか。
実は、AIが新しく迷いを作っているわけではありません。
導入する前から、判断の基準が言葉になっていなかった、それだけの話だと私は見ています。
支援先の会社では、営業資料の最終判断を、社長がいつも自分ひとりで担っていました。
担当者が資料を仕上げるたびに社長へ確認が上がり、社長はそのつど悩みながら答えていました。
AIを導入した後も、この構図は変わりませんでした。
AIが作った文章を前にしても、社長は以前と同じ、基準の無さで迷い続けていたのです。
ホワイトボードで業務の流れを書き出してみると、迷いの原因はAIではなく、判断基準が最初から言葉にされていなかった点にあると分かりました。
私は独立してから、1,200件を超える経営相談に対応してきましたが、迷いが深い会社ほど、共通して判断の物差しが曖昧でした。
AIは、その曖昧さを新しく生んだわけではなく、以前からあった迷いを、より速いスピードで表に出しているだけです。
別の支援先では、AIが出した複数の提案文を前に、社長がどれを選べばよいか決められない場面が続きました。
AIの提案自体に、大きな問題はありませんでした。
ただ、何を優先するのか、誰に向けた文章にするのか、という基準が社内で共有されていなかったため、選択肢が増えるほど迷いも深まっていったのです。
基準をひとつ決めてから同じ作業をやり直すと、確認の回数が減り、選ぶ時間も短くなりました。
AI導入を進める際は、まずAIに任せる範囲と、人が最後に判断する範囲を分けてみてください。
ここを分けるだけで、迷いの多くは整理されます。
全ての業務を一気に変える必要はありません。
まずはひとつの業務で構いません。
AIを入れても迷いが消えない原因は、AIの性能ではなく、判断基準が言葉にされていない点にあります。
AIは、経営者の代わりに「決断する道具」ではありません。
基準さえ明確になれば、AIは迷いを増やす道具ではなく、迷いを整理する道具に変わります。
まずは、今一番迷いを感じている判断をひとつ選び、その基準を言葉にする取り組みから始めてみてください。


