【AIを試して終わる会社に共通するのは、旗を振る人がいないという点】「AIを導入したのに、現場では誰も使っていない」何か、心当たりはないでしょうか。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が発表した実態調査を読み、この違和感の正体がはっきりしました。
同調査によると、AIやITの推進を担う専任部署を置いている企業は、わずか2.3%にとどまります。
専任の担当者がいる企業も、3.0%しかありません。
最も多かった答えは、「特定の部署はなく、経営者や現場が個別に推進している」で、88.0%にのぼりました。
つまり、多くの中小企業では、AI活用の旗を振る人が、はっきり決まっているわけでは無いです。
人手不足が続く中、AIに頼りたいと考えるのは、経営者として当然の発想です。
実際、社員に「AIを使ってほしい」と伝えた経営者は、少なくないと思います。
それでも、数か月後には誰も触れなくなり、静かに投資だけが残ってしまう。
そんな経験、心当たりはありませんか。
同業他社がAIを使いこなしているという話を耳にすれば、焦りだけが募っていきます。
自社だけが取り残されているのではないかという不安は、経営者の肩に想像以上に重くのしかかります。
その不安を解消しようと、慌てて別のツールへ乗り換えるケースもあります。
しかし、ツールを変えても、旗を振る人が決まっていなければ、同じ結果を繰り返すだけです。
「経営者も現場も、それぞれ頑張ればいい」
一見、柔軟で良さそうな体制に聞こえます。
しかし、この体制こそが、AIを「試して終わる会社」を生んでいると、私は考えています。
「誰かがやってくれるはず」という空気が、結局、誰も本腰を入れないまま放置される結果を招くからです。
私はこれまで、1,200件を超える経営相談と、6万件を超える広告制作の現場に携わってきました。
その中で繰り返し見てきたのは、新しい取り組みが広がる会社と、立ち消える会社の分かれ目です。
この分かれ目は、能力でも予算でもありません。
誰が推進役を担うか、明確に決まっているかどうかです。
あなたの場合、AI活用の推進役は、はっきりと一人に決まっているでしょうか。
経営層は、社員の誰かが自発的に使いこなしてくれると期待しがちです。
しかし、日々の業務に追われる現場にとって、頼まれてもいない取り組みは後回しにされます。
たとえ一人の社員がAIを使いこなせても、それはあくまで個人の工夫にとどまります。
その社員が退職をすれば、積み上げた使い方も一瞬にして消えてしまうのです。
社内で共有されないまま埋もれていく工夫は、AIに限らず、これまでも数多く見てきました。
これを防ぐには、たとえ小さな範囲でも、担当者を一人だけ決めておくと効果的です。
役職の高さより、実際に手を動かし、「進捗を追いかけ続けられる人」かどうかを重視してください。
担当を決めたら、月に一度でよいので、使ってみて分かった点を共有する場を設けてみてください。
ひょっとして、経営者自身は、「使う人」ではなく「命じる人」で止まっていないでしょうか。
現場に指示を出した後、経営者自身はAIに触れないまま、報告だけを受け取る形になりがちです。
すると、現場がどこでつまずいているのか、実感として伝わりません。
私はホワイトボードを使い、経営者の頭の中にある論点をその場で整理する対話を重ねてきました。
その経験から言えるのは、経営者自身が一度でも手を動かした会社ほど、現場の壁を早く察知できる点です。
「使ってみて」と伝えるだけの経営者がいます。
一方で、「使ってみたら、ここが難しかった」と伝える経営者もいます。
両者では、現場の受け止め方がまったく違います。
命じるだけで見えない現実は、実際に触れて、初めて見えてきます。
1日15分でも、経営者自身がAIに向き合う時間を確保するだけで、判断の質は変わってきます。
生成AIをめぐる帝国データバンクの報道では、活用企業の86.7%が効果を実感しているという結果も出ています。
同じ調査では、社内の「使いこなし格差の拡大」を課題に挙げた企業が、18.8%にのぼるとも報告されています。
使える社員と使えない社員の差は、資金力や社員数の違いだけで生まれているわけではありません。
誰か一人が当事者として担い、経営者自身も現場の実感を共有できているかどうかの差だと、私は考えています。
体制を大きく変える必要はありません。
特別な仕組みや、高額な投資も必要ないです。
まずは、担当を一人決めるところから始めてみてください。
そして、経営者自身も、実際にAIへ触れる時間を確保してみてください。
旗を振る人が一人でもはっきりすれば、AIは「試して終わる」から、「使い続ける」へと変わっていきます。
その一歩を、これからも伴走しながら支えていきたいと思っています。


