2005年9月に<三共>と<第一製薬>と経営統合して純粋持ち株会社<第一三共>を発足しました。
統合した段階で<第一三共>は病院向けの医療用医薬品に特化しましたが2006年4月に大衆薬などのヘルスケア事業は新会社の<第一三共ヘルスケア>を設立しました。
2007年4月に純粋持ち株会社であった<第一三共>を事業会社へと移行しました。
2008年10月に<第一三共>はインドの製薬会社である<ランバクシーラボラトリーズ>を連結子会社としました。
2014年に米国の<Ambit Biosciences>をグループ化しました。
2015年3月にインドの製薬会社である<サンファーマ>が<ランバクシーラボラトリーズ>を吸収合併しました。
2015年4月に保有していた全株式を売却して<ランバクシーラボラトリーズ>を連結子会社から外しました。
2015年11月に<第一三共ヘルスケア>が香川県の<アイム>を子会社化しました。
化粧品などの通信販売を手掛ける<アイム>を子会社化することでマーケティングノウハウや物流基盤コールセンターなどの顧客サポート体制など通信販売の事業基盤を速やかに構築してスキンケア領域の強化を図る考えです。
<第一三共>のビジネスモデル2017年11月に<北里第一三共ワクチン>を完全子会社化したと発表しました。
学校法人<北里研究所>との共同出資会社でワクチン事業を手掛けていましたがワクチンの自主回収や新製品の開発の遅れが響き経営の基盤が揺らいでいました。
完全子会社化することで意思決定の速度を上げて再建を円滑に進める考えです。
2017年12月に多額の研究開発費を投じて抗がん剤の開発を加速すると表明しました。
2020年度までに総額9000億円の研究開発費を投じて2025年度までに7つの大型新薬を発売して同事業の売上高を現在の20倍の3000億円に引き上げる計画です。
「あらゆる資源をがんに傾斜配分する」「資金が足りなければM&Aなどの予算枠になる事業開発費の5000億円も投入する」と<第一三共>の中山譲治会長は研究開発部門の戦略説明会で強調しました。
<第一三共>を歴史的に見れば循環器系の治療薬大手ですが2008年に買収したインドの後発薬大手<ランバクシー>は品質不正などの不祥事を繰り返して巨額損失の計上に追い込まれました。
経営が混乱して新薬の開発も停滞し大型治療薬の特許切れを迎えるなど厳しい経営の状況にありました。
中山譲治会長が2016年に英国の<アストラゼネカ>からがん領域の研究部門の責任者に迎えたアントワン・イヴェル氏が手腕を発揮して新薬候補品が揃ってきました。
2018年3月に<日立化成>と再生医療製品の製造で提携したと発表しました。
<日立化成>は再生医療製品の新工場で<第一三共>の治験薬を製造します。
2018年4月に創薬支援ベンチャーである米国の<ダーウィンヘルス>とがん治療薬の標的になるがん細胞だけに現れるたんぱく質などの物質を探し出す共同研究を始めると発表しました。
<第一三共>が持つ創薬の知見と<ダーウィンヘルス>の解析技術を組み合わせることでがん標的の候補物質を探索・評価・検証してがん治療薬の開発につなげます。
2018年4月に発表した「2018年3月期」の連結決算は純利益が13%増でした。
同時に発表した「2019年3月期」の連結純利益は前期比9%減の見込みと発表しました。
欧米で特許が切れた高血圧症治療薬「オルメサルタン」の特許切れや国内の薬価引き下げなどで採算が悪化すると予測しています。
2018年5月に1つの抗体で2種類の抗原に結合する「二重特異性抗体」に関してカナダのバイオベンチャーである<ザイムワークス>との共同研究を広げると発表しました。
2016年に<ザイムワークス>と共同研究契約を結びましたが「二重特異性抗体」の作製技術について新たに2種類の抗体の権利を取得しました。
通常の抗体は1つの抗体につき1種類の抗原としか結合しません。
二重特異性抗体の特長を生かせば従来の抗体では実現できなかった作用が期待できます。
2018年7月に特許切れ医薬品の一部を医薬品卸大手の<アルフレッサ・HD>へ譲渡すると発表。
特許切れ医薬品は薬価制度改革で価格を引き下げる仕組みが導入され収益環境が厳しくなっています。
限られた経営資源を次の成長の柱として取り組むがん事業に振り向ける考えです。
2018年10月に白血病を対象に開発中の抗がん剤「キザルチニブ」の製造販売承認を日本国内で申請したと発表しました。
厚生労働省から希少疾病用医薬品に指定され迅速な審査が受けられる見通しです。
同じく2018年10月に開発中の抗がん剤についてドイツの<メルク>と米国<ファイザー>の2社と提携したと発表しました。
<第一三共>が開発中の抗がん剤で2社の医薬品と併用する効果を確認する臨床試験を始めます。
2018年12月にがん治療薬の開発を加速するため世界で臨床試験支援を手がける米国の<サラ・キャノン研究所>と提携契約を結んだと発表しました。
がん治療薬候補について治験施設のネットワークを利用して患者を素早く集められるほか日米欧など主要国で同時に治験を進められるようになります。
2019年3月に英国の製薬大手である<アストラゼネカ>との提携を発表しました。
売上高の30%をがん領域で稼ぎ世界70カ国以上に販売網を持つ<アストラゼネカ>との提携は本格的に抗がん剤に参入する<第一三共>にとって強力なパートナーになります。
<第一三共>の中山譲治会長は<アストラゼネカ>について……「がん治療薬で豊富な経験があり単独の場合より薬の価値を高められる」と記者会見で述べています。
<第一三共>は「特許の崖」と呼ばれる特許切れによる業績悪化の懸念から中山譲治会長の事業の英断により『がんの新薬開発』という新たなビジネスモデルへの転換に取り組み市場関係者から注目される有望企業へと変身することができました。
昭和時代に『結核』が「不治の病」でなくなったように平成に『エイズ』が「不治の病」でなくなったように令和の時代には『難治性がん』や『遺伝性難病』が克服できるようになる。
ある市場関係者が語った言葉ですがこのカギを握るのは最先端のバイオ医薬品がどれだけ普及するかに掛かってきます。
バイオ医薬品の研究開発で日本企業は世界の先頭集団の一角を占めています。
世界のメガファーマでは米国の<ファイザー>を代表とする「ファイザーモデル」と呼ばれる成長戦略の手法が主流でした。
多額の資金を支払う企業買収により「医薬品」や「新薬候補」を手に入れるという成長戦略のビジネスモデルです。
「1製品」に1000億円の開発費がかかるとされる医薬品のため資金の獲得が「ファイザーモデル」の目的になっています。
企業を丸ごと買収すると周辺分野や関連性の乏しい薬も一緒に伴ってきます。
医薬品の技術の陳腐化も早いため新薬の候補が途絶えればまた別の企業を買収することになります。
しかし<第一三共>のように製品を絞った包括的な提携は開発段階が後期で有望視されている製品を選べるメリットがあります。
様々な薬剤との併用や強みとする領域で製品群を広げられるなどの相乗効果も期待できます。
<第一三共>はがん治療薬の中でも……抗体に低分子薬を結びつけた抗体薬物複合体と白血病治療薬を最重点領域と位置づけています。
2025年度までに「がん領域」で7つの大型新薬の投入を目指しています。
世界の医薬品メーカーの売上は桁違いに大きい規模ですが<第一三共>は医薬品開発の「選択と集中」を英断したことで業界をリードするビジネスモデルを確立することができ始めています。
今日の事例で何を学べるでしょうか?
大企業とは資産規模が違うわれわれ中小企業にとって大企業と同じ市場で競い合うことが得策ではないことは明白ですが事業の「選択と集中」をすることで大企業と互角に競い合うことは不可能ではありません。
どこまで事業領域を絞り込むことができるか?
その「決断力」があなたの会社を存続させる鍵になります。
優れた経営者に求められるはここぞという時の「英断」です。


