2007年に『郵政民営化』の一環で銀行業務の営業を開始してからまもなく12年目を迎える<ゆうちょ銀行>ですが官営時代からの信頼性の高さもあり180兆円強という貯金残高量を保有する巨大バンクに成長しました。
今秋には親会社である<日本郵政>の政府による株売却が予定されています。
それに伴い子会社である<ゆうちょ銀行>の株売却も今後は想定内の可能性が高まります。
今日のメルマガの企業事例は<ゆうちょ銀行>です。
大企業の企業事例を読んで変化する経営環境を読み取っていただきぜひ自社の事業に照らし合わせながら新たな取り組みに生かしてください。
企業事例[第353話]のテーマは『官業から民営化への道』<日本郵政>株式会社の子会社として発足郵政民営化関連6法公布による『郵政民営化』の準備に伴い2006年9月に株式会社<ゆうちょ>が民営化準備会社として設立しました。
2007年10月に株式会社<ゆうちょ銀行>に商号を変更して営業を開始しました。
2011年10月に<全国銀行協会>に『特例会員』として正式に加盟しました。
2012年7月に本店を『JPタワー』に移転しました。
2015年6月と8月に<ゴールドマン・サックス証券>から運用部門の人材を採用しました。
2015年11月に<東京証券取引所>の市場第1部に株式を上場しました。
2016年4月に親会社の<日本郵政>が<ファミリーマート>と業務提携しました。
そのことにより<ファミリーマート>の店舗に『ゆうちょ銀行ATM』を設置拡大していく方針を表明しました。
<ゆうちょ銀行>のビジネスモデル2018年2月に<ゆうちょ銀行>と<かんぽ生命保険>は新たな運用会社を設立しました。
新会社名は<JPインベストメント>で1200億円のファンドを設けて主にベンチャー企業に投資します。
低金利の環境下で主力だった日本国債で運用難に直面しているため『積極運用』へと舵を切ります。
成長性の高い投資先を選び5~10年間の長期投資で配当や上場益を得る狙いです。
2018年6月に新興の資産運用会社に運用資金を提供するファンドの立ち上げの検討を始めました。
創業から間がなくても専門的な技術を持つ運用会社や中小のベンチャーキャピタルなどに資金を委ねるファンドをつくり運用成果の配分を受け取る狙いです。
このような取り組みは海外で定着していますが国内では初めてになります。
同じく2018年6月に積み立て型の少額投資非課税制度の口座獲得が伸びていると表明しました。
利用者の80%超は新規顧客で年代の中心は20~50代の現役世代です。
その半数以上が女性ですが出産祝いで受け取った資金を預けるため出産後に貯金口座を開設する母親が多いため『つみたてNISA』の口座を利用して投資信託を購入すれば定期貯金よりも高い利回りが期待できる点などを強調して口座獲得につなげています。
国内の出生数は年100万人弱で約3分の1が出産祝い金などを預けるために郵便局を訪れています。
2019年8月に発表した『2018年4~6月期』の連結決算は純利益が前期比12%減でした。
<日本銀行>の金融緩和による低金利の長期化を背景に日本国債の運用益が減少しました。
同じく2019年8月から<あおぞら銀行>のATMを<ゆうちょ銀行>のATMに置き換える作業を始めました。
<ゆうちょ銀行>は<あおぞら銀行>のATM引き受けで収益力を高める考えです。
人口減少化とキャッシュレス化への対応で<あおぞら銀行>はATM廃止でコスト削減を狙います。
2019年9月に<京都銀行>は大阪府や滋賀県などの地域で<ゆうちょ銀行>のATMの利用手数料を無料にすると発表しました。
あわせて同地域のATMを来春から順次撤去し最終的には150台を削減し年間でATMの維持費など約3億円のコスト削減につなげる考えです。
2018年12月に政府の『郵政民営化委員会』が<ゆうちょ銀行>が扱う貯金の預入限度額を実質倍増させる提言をしました。
大幅な引き上げは民業圧迫になると金融庁が抵抗してきましたが利便性向上を盾に『郵政民営化委員会』が押し切ったカタチになります。
現状は民間金融機関の普通預金にあたる通常貯金と定期性貯金の合計で1300万円です。
2019年3月に政府は<ゆうちょ銀行>の貯金の預入限度額を現状の2倍となる2600万円とする政令を閣議決定しました。
これにより退職金などのまとまったお金を預けやすくなりますが民間金融機関などへの「民業圧迫」などの懸念が残されています。
2019年5月にスマートフォンを使った決済サービス『ゆうちょPay』が始まりました。
あらかじめダウンロードしておくアプリを買い物の際にレジで起動して表示されるQRコードを読み取れば自動的に口座から代金が引き落とされます。
その一方で……今秋には数多くの金融機関が参加しオールバンクを標榜する『バンクペイ』のサービスが始まります。
<三菱UFJ銀行><三井住友銀行><みずほ銀行>のメガバンクをはじめ地方銀行・信用金庫・<JAバンク>など700以上の金融機関が参加の意向を示しています。
<ICT総研>によると2018年春に190万人ほどだったスマホのQRコード決済の国内利用者は2020年春には5倍の960万人になると予測しています。
2019年6月に約5000件の顧客情報を紛失したことが判明したと発表しました。
東京貯金事務センターに届いた合計約5000枚の「振替払出書」と「振替払出証書」を紛失しました。
同じく2019年6月に定時株主総会で池田憲人社長は不適切販売について陳謝しました。
不適切な手続きで高齢者に投資信託を販売していた問題について「守るべきルールが順守されていなかった点を厳粛に受け止め深く反省している」と述べました。
2019年7月にスマホ決済事業者に対して接続料を6倍に上げ利用額の1%程度とする交渉を始めました。
加盟店に求める手数料収入から銀行に払う接続手数料を差し引いた分がスマホ決済事業者の利益になりますが加盟店手数料は最大でも利用額の約3%で接続手数料の6倍の引き上げはスマホ決済事業者の死活問題になります。
日本郵政グループの<かんぽ生命保険>と<日本郵便>で発覚した不適切な保険販売はこれからの『郵政民営化』の工程に影響を及ぼしかねません。
<ゆうちょ銀行>の貯金限度額の倍増を実現し資金を呼び込んで投資信託の販売拡大につなげ収益源に育てるという狙いがあります。
銀行預金と違い『投資信託』は元本割れリスクがあります。
主力の高齢顧客への対応など高度で丁寧な説明や助言ができる営業体制が整っているでしょうか?
郵便局は<ゆうちょ銀行>の貯金集めをしながら投資信託を一緒に売るところもあります。
郵便局に貯金の窓口業務をしてもらうため年に6000億円ほどの手数料を支払っていますが『投資信託』専業の他社に比べれば知識や経験で劣る面は否めません。
政府は57%を保有する『日本郵政株』を今秋にも追加売却して持ち分を民営化法が定める下限の『3分の1超』にする考えです。
稼ぎ頭の<ゆうちょ銀行>は低金利政策で収益の確保に苦しんでいます。
<ゆうちょ銀行>は全国に約2万4000ある郵便局のほか約2万9000台のATMを抱えていて貯金残高は180兆円強に達しています。
上場企業として一般株主に『成長戦略』を示す責任もあります。
この巨額の資金の運用は戦略的活用を含めたビジネスモデルの再構築が不可欠です。
今日の事例で何を学べるでしょうか?
低金利政策で従来のビジネスモデルが通用しなくなった会社は……次の主力になる事業に着手して成長戦略を描けなければ市場からの要求や期待に応えることができないため『次代の成長戦略を描く』ことが終わりのない課題となる。


