『産業革命以降の気温上昇を2度未満にする』という目標のために世界各国がCO2削減に励んでいます。
2020年以降の地球温暖化の対策として第21回気候変動枠組条約締約国会議の開催地パリで採択された協定が『パリ協定』ですが……21世紀後半には温室効果ガスを実質ゼロにすることが目標とされていて加盟国は5年ごとに削減目標を見直し国連に報告することが義務付けられています。
2015年7月に日本は……『2030年度に2013年度比で26%削減する』という高い削減目標を提出しました。
国連の専門機関である<国際海事機関>は環境規制を大幅に強化することを決めました。
来年の2020年から硫黄酸化物(SOx)の規制が始まり2050年に全ての船舶から出る二酸化炭素などの温暖化ガスを2008年比で半減する計画です。
今日のメルマガの企業事例は< 日本郵船>です。
大企業の企業事例を読んで変化する経営環境を読み取っていただきぜひ自社の事業に照らし合わせながら新たな取り組みに生かしてください。
企業事例[第363話]のタイトルは『2020年に始まる世界の環境規制』合併や統合で事業を拡大しています1885年に<郵便汽船三菱会社>と<共同運輸会社>が合併して<日本郵船会社>を設立しました。
1893年に<日本郵船株式会社>が株式会社として組織を改編しました。
1907年4月に<日清汽船>を設立しました。
1912年に<朝鮮郵船>を設立しました。
1926年に<第二東洋汽船>株式会社を合併しました。
1939年に<近海郵船>株式会社を合併しました。
1964年に<三菱海運>株式会社と合併しました。
1966年にコンテナサービスを開始しました。
1989年に<クリスタルクルーズジャパン>株式会社を設立して客船事業に再参入しました。
1991年に<日本ライナーシステム>株式会社と合併しました。
1998年に<昭和海運>株式会社と合併しました。
2006年に<ヤマトホールディングス>との資本提携を発表しました。
2017年に<商船三井><川崎汽船>と共にコンテナ船事業を統合して<オーシャン・ネットワーク・エクスプレス>が新会社として発足しました。
< 日本郵船 >のビジネスモデル2018年4月に『2019年3月期』の連結経常利益が前期推定比で50%増えると発表しました。
浮き沈みの激しいコンテナ船事業の統合など大胆な構造改革を進めてきた効果が出て世界的な景気回復を背景に鉄鉱石や石炭などの荷動きも活発になってきています。
2018年5月に『自動船舶』の実用化に向けての日本政府の取り組みが明らかになりました。
遠隔で操作したり自動で運航したりする『自動船舶』の国際ルールづくりのため国連の国際海事機関で議論が始まり日本政府も実験結果を踏まえて2022年度にも法改正し日本での自動運航を可能にする考えです。
2018年7月に子会社の<日本貨物航空>が国土交通省から業務改善命令も受けました。
不適切な整備や記録の改ざんが発覚して6月から大半の機体が運航できない状態が続いていました。
<日本貨物航空>は主力の海運に陸上輸送も組み合わせ総合物流会社を目指す<日本郵船>の成長シナリオの柱でした。
大半の貨物機が飛べない現状では単純計算で1週間ごとに20億円程度の売上を失っていることになります。
そのため『2019年3月期』の連結純利益が前期比40%減の見通しと発表しました。
2018年8月に<日本郵船>と<三菱倉庫>は4事業子会社を再編すると発表しました。
国内で海上コンテナの荷役などを手掛ける共同出資の持ち株会社を新設して傘下に4社を移します。
再編する4社は……
- ユニエツクス(東京)
- 旭運輸(名古屋市)
- 郵船港運(大阪市)
- 日本コンテナ・ターミナル(東京)
港湾運送事業のほか通関や倉庫など関連業務の効率化を図る狙いです。
2018年11月に運航中のCO2排出量をゼロに抑えたコンセプト船を発表しました。
燃料電池を利用した電気推進装置を備え船体重量の軽量化や太陽光パネルの採用など船舶の脱炭素化を進める考えです。
コンセプト船の名称は『NYKスーパーエコシップ2050』です。
船体形状の工夫や炭素繊維などの複合材を活用した軽量化といった取り組みで運航に必要な燃料由来の必要エネルギーを減らすため重油が燃料の現行船と比べて67%の削減を目標としています。
同じく2018年11月に独自の電子通貨を開発し船上での決済や送金に活用すると発表しました。
船員は船上で給与の一部を現金で受け取ったり日用品を現金で購入したりしています。
このため1隻当たり多くの現金が必要で管理に手間がかかるほか海外送金には多額のコストが掛かります。
世界中の船上にある現金は約800億円に達していると言われます。
船員は船上にいながら電子通貨で給与を受け取ったり日用品を買ったりできるようになります。
2019年1月に子会社の<郵船クルーズ>の株式50%分を売却すると発表しました船舶系投資ファンドである<アンカー・シップ・パートナーズ>に売却することを決めました。
保有する豪華客船『飛鳥2』の老朽化問題に直面していて大規模な改修が必要になります。
2019年2月に豪華客船『飛鳥2』の後継船を建造して2020年代半ばの投入を表明しました。
日本でもクルーズ旅行の市場が広がり米国系など外資の参入が活発になっていて豊かなシニア層などの消費を取り込むため積極的な投資を決めました。
2019年3月に北米の港湾荷役事業会社の持ち分を売却すると発表しました。
売却先は豪州の<マッコーリー>系のインフラ投資ファンドです。
<日本郵船>は『ばら積み船』など主力の海運事業に注力するため政策保有株の売却を進めています。
2019年4月に発表した『2019年3月期』の最終損益は445億円の赤字となりました。
<商船三井><川崎汽船>と共同出資するコンテナ船事業統合会社の不調も業績の足を引っ張りました。
2019年9月に外航船では世界で初めてとなる自動運航の実験に成功したと発表しました。
自動車専用船を使い沖縄県~高知県と名古屋~横浜の2航路でシステムが自動で針路を決定して運航しました。
<日本郵船>の小山智之常務経営委員は……「技術は郵船グループでとどめず日本の物流を支える手段としたい」と記者会見で説明しました。
2019年10月に2020年に始まる環境規制に対応した船舶燃料への切り替えを始めました。
<日本郵船>の長沢仁志社長は……「規制対応の燃料が予定通り供給されるかは不透明」と述べています。
そして運航中のCO2排出量ゼロを目指すコンセプト船を発表しました。
船体の形状を工夫したり炭素繊維複合材を活用したりすることで運航に必要なエネルギーを現行船比で約70%減らす構想です。
必要な技術を2050年までに確立する方針を立てています。
環境規制の対応は主に硫黄分の少ない規制に適合した適合燃料を使うかエンジン排気の脱硫装置(スクラバー)を船に備えるかのふたつです。
燃料切り替えで燃料費が年1千億円規模で増える見込みであり脱硫装置(スクラバー)の搭載は1隻あたり数億円かかるためどちらの対応策を選択してもコスト増になることが明白です。
これらのコスト増を運賃の値上げでカバーするしか方法はありません。
これらコスト増による運賃の値上げなどを軽減するためには人工知能などを使って人の力に極力頼らずに航海する自動運航船の開発が欠かせません。
気象条件に応じたエンジン制御を通じた燃費の改善や部品交換時期の把握や故障予測なども容易になる可能性があり航海日程の短縮も期待できます。
年間約2千件発生する海難事故の70%は人的ミスが事故原因とされています。
しかし自動運航技術の開発ではシンガポールや海運産業が盛んな北欧の動きが活発です。
世界レベルの自動運航技術の開発競争に<日本郵船>が一歩先んじることが海運のコモディティー化から抜け出る『差別化戦略の要』であると言えます。
今日の事例で何を学べるでしょうか?
コモディティー化が進んでいる業界に位置する会社は……新たな技術や設備を活用した新たな視点による改革案を見出しビジネスモデルを変えることが同業他社やライバル企業との『差別化戦略の鍵』になる。


