「脱炭素対応の必要性は理解している。とはいえ設備投資が重く売上には直結しない。」
この悩みを抱える中小企業経営者は少なくありません。
日本商工会議所の2025年調査では約9割の中小企業が
エネルギー価格上昇の経営影響を認めています。
脱炭素の最大の壁として約6割が費用面の負担を挙げました。
解決策は環境対応を守りの義務から
新技術を起点にした経営戦略へ再設計する方法です。
取引先が求める環境基準と自社技術を結びつけると価格以外の評価軸が生まれます。
今回は環境対応が利益に届かない構造を分析し収益化する視点を解説します。
なぜ環境対応がコスト増で終わるのか
環境対応に取り組みながら利益に結びつかない企業には共通した構造があります。
最も多いのは技術改善の成果が営業活動に反映されていないパターンです。
製造現場で廃材が減り不良率が下がっても提案書に落とし込まれなければ
取引先からは要求に応えただけと評価されます。
次に多いのは補助金ありきで開発テーマを決めるパターンです。
資金確保の面では合理的に見えます。
しかし顧客が評価する価値とずれると開発後の販路が弱くなります。
技術部門は成果を出しても営業部門に売り方が見えず社内の温度差が広がります。
さらに環境対応を法令順守や取引先要請への対応だけで完結させる企業も少なくありません。
2025年版中小企業白書でもGXの最大の課題として
コストに見合うメリットが無いが上位に挙がっています。
守りの対応だけでは差別化にはつながりません。
つまり収益に届かない原因は技術力ではありません。
誰のどんな負担を減らすのかという顧客価値への変換が弱いまま進めている点にあります。
2025年版中小企業白書では中規模・小規模企業の6割超が
具体的な取り組みは未着手の段階にとどまっています。
脱炭素の重要性は理解していても行動に移せていない企業が大半です。
GXに取り組んだ企業でも「コストに見合うメリットがない」「推進人材が足りない」が課題の上位に並びました。
環境省の脱炭素事例集でも類似の失敗が報告されています。
環境配慮材に切り替えて廃材削減に成功しながら
営業資料に顧客利点を記載しなかった製造業の事例です。
この意識と行動のギャップは改善が社内で完結し
顧客価値に届いていない実態を裏付けています。
新技術を顧客が買う理由に変える3つの視点
利益につなげるには技術、顧客、収益の3点を同時に設計する必要があります。
1つ目は顧客の課題から出発する視点です。
自社技術を説明する前に取引先が何に困っているかを確認します。
- 環境監査への負担増
- 調達基準の厳格化
- CO2排出量の開示要求などが代表的です。
相手の課題が見えれば自社技術を問題解決の手段として提案できます。
2つ目は環境価値を買う理由に変換する視点です。
CO2削減に貢献しますだけでは購買担当者が社内決裁を通す材料になりません。
「環境監査の準備資料に使えます」
「調達方針に適合した記録を提供します」
など相手が社内説明で使える言葉に翻訳する作業が欠かせません。
3つ目は単発販売で終わらせない収益設計です。
- 導入後の運用確認や改善提案
- 排出量データの管理支援など取引が続く仕組みを組み込みます。
【モデル事例】
金属製品製造業の備前発条株式会社はこの3つの視点を実践した企業です。
2019年に環境配慮なしでは取引先の要求に応えられないとの危機感からGXに着手しました。
社内各部署から約10人でSDGsチームを設置しCO2削減を経営目標に据えています。
照明のLED化や塗装設備の更新を進め
2024年には前年比約127tの削減を達成しました。
この成果を展示会や自社サイトで発信した結果採用や受注増にもつながっています。
売上は2020年度の26億円から2024年度には35億円へ回復しました。(※2025年版中小企業白書より)
今日のまとめ
環境対応を義務的な支出と捉えるか経営戦略として設計するかで競争力には大きな差がつきます。
利益に結びつかない原因は技術力ではなく顧客価値への変換不足にあります。
技術、顧客、収益を同時に設計し組織の評価にも組み込めば
中小企業でも持続可能な収益構造を築けます。
ただし組織全体を動かす仕組みがなければ
取り組みは経営者の思いつきで終わります。
環境価値を相手が社内で通せる言葉に変換し継続的な取引へ設計する視点が重要です。


