【黒字なのに資金繰りが厳しい理由】金利上昇と『勘』の経営の限界
日銀の政策金利は、すでに1.0%に達しています。
2026年6月の会合で0.25%引き上げられ、7月30、31日の会合では据え置かれました。
市場では、年内にもう一段の利上げがあると見る声が多く、1.25%、さらにその先の1.5%も現実味を帯びています。
帝国データバンクは、全国およそ10万社を対象に調査を行いました。
その試算では、政策金利が1.0%に達した段階で、3.3%の企業が経常赤字に転落するとされていました。
つまり今、まさにその水準に入っています。
1.5%まで進めば、その割合は6.1%まで膨らむとされています。
倒産の実数にも、すでに表れ始めています。
2026年上半期の企業倒産は5,335件で、4年連続の増加です。
負債5,000万円未満の小規模な倒産は、統計を取り始めて以降で最多水準になっています。
大きな会社ではなく、私たちの周りにいる規模の会社から、静かに倒れ始めているのです。
私はこの数字を見て、あらためて「勘の経営」の限界を感じました。
これまで多くの中小企業は、金利がほぼゼロの時代を長く過ごしてきました。
多少資金繰りが甘くても、借りればなんとかなる場面が多かったはずです。
だからこそ、細かい数字を見なくても、経験と勘だけで乗り切れてきた社長は少なくありません。
日頃、中小企業の社長とお会いしますが、数字の話になると、途端に口数が減る方がいます。
試算表には目を通していても、深く読み込もうとしない。
決算の数字は税理士に任せきりで、自分では説明できない。
金融機関の担当者から業績を聞かれても、言葉に詰まってしまう方も珍しくありません。
社員から「今月の数字はどうですか」と聞かれ、あいまいに答えてしまった経験がある方もいるはずです。
これは、経営者としての能力が低いという話ではありません。
むしろ逆で、長年の経験と勘で会社を回してきた自信があるからこそ、数字を見なくても分かると思い込んでしまうのです。
自分の判断が間違っていたと突きつけられるのが怖いという気持ちも、その裏側にはあるはずです。
しかし、この思い込みこそが、今は危ないと考えています。
中小企業庁が公表した「2026年版中小企業白書」も、同じ構造を指摘しています。
経営環境の転換期においては、現状維持こそ最大のリスクであり、経営者の能力の差が明暗を分けるというのです。
金利がある世界は、これまでとルールが違うからです。
借入コストが経営を圧迫する局面では、数字を把握していない会社ほど、真っ先に影響を受けます。
さらに厄介なのは、黒字であっても資金繰りが詰まるという構造です。
利益が出ていても、売掛金の回収が遅れたり、在庫や設備投資に資金が固定されていたりすれば、手元の現金は簡単に不足します。
利益と現金は、まったく別の数字として管理する必要があります。
にもかかわらず、多くの会社では、損益計算書は見ても、資金繰り表までは作っていません。
私はこれまで、1,200件を超える経営相談に対応してきました。
またコンサルタント仲間に話を聞いても、資金繰りに行き詰まってから相談に来られる社長は決して少なくありません。
多くの場合、業績自体は悪くないのに、返済や支払いのタイミングを数字で管理できていなかった点が原因です。
事業計画をつくる支援をする際も、私は数字と物語を両方描く姿勢を大切にしています。
ホワイトボードを使い、売上や利益だけでなく、いついくらの支払いや返済があるのかを経営者自身の手で書き出してもらいます。
すると、頭の中では見えていなかった資金の流れが、初めて形になって見えてきます。
金融機関が評価するのも、勢いのある言葉ではなく、先の資金の動きまで具体的に語れる経営者です。
数字を見る習慣ひとつで、経営の伸び方は変わります。
だからこそ、今、経営者に求められているのは、難しい財務分析ではありません。
まずは、今の借入条件と金利を、自分の言葉で説明できるようにしておくのが第一歩です。
金利が0.5%上がったら、年間の返済負担がどれだけ増えるのか、一度計算してみてください。
余裕があれば、3か月先までの入出金を書き出した簡単な資金繰り表もつくってみてください。
手元のノートやスプレッドシートに、入金と出金の予定を並べてみるだけでも十分です。
これは前職の社長時代に取り組んでいた習慣です。
数字を見るのは、これまでの勘を否定する作業ではありません。
むしろ、勘の精度を上げるための裏付けになります。
長年培ってきた勘は、決して無駄になりません。
数字という裏付けを加えれば、これまで以上に頼れる武器になります。
まずは自社の借入条件を、あらためて確認してみませんか。


