【変わりたいのに変われない経営者へ】後継者難倒産264件が突きつける、判断を渡せない代償2026年上半期、後継者難による倒産は264件で、前年同期比15%増となりました。
東京商工リサーチが調査を始めた2013年以降で最多です。
要因別に見ると、代表者の「死亡」が119件、「体調不良」が107件です。
この2つを合わせると、9割近くを占めています。(日経記事をもとにして算出した数字です)
黒字であっても、後継者に引き継げる形が整っていなければ、会社は畳まざるを得なくなります。
「まだ自分がいるから大丈夫」という感覚は、そのまま放置すると、いつか誰かに突然の重荷として残ります。
これは、遠い将来の話ではありません。
40代・50代の経営者が今、判断を先送りしているかどうかが、10年後の会社の存続を左右する局面に来ています。
今の会社の規模や業種を問わず、誰にでも起こり得る話です。
取引先との条件交渉、社員の評価、資金繰りの判断など…。
これらはすべて、経営者の頭の中で完結し、記録にも会議にも残らないまま処理されている会社が少なくありません。
本人にとっては当たり前の判断でも、周囲から見ると、なぜそう決めたのか誰にも分からない、というケースが多いです。
私自身、40代前半に大きな行き詰まりを経験しました。
20代には効率と数字ばかりを優先していた時期があり、周囲との関係にひずみを生んだ時期があります。
成果を出しても、信頼はそれだけでは積み上がらないと痛感しました。
あの経験があるからこそ断言できるのですが、40代・50代が変化を怖がるのは、意志が弱いからではありません。
積み上げてきた経験があるほど、それを手放す抵抗は強くなるだけなのです。
長く経営を続けていると、今のやり方で会社が回っている実感があります。
だからこそ、新しい判断や仕組みを前にしたとき、「今のままでも問題は起きていない」と後回しにしてしまいやすくなります。
これは、怠けているわけではありません。
むしろ、これまでの判断が間違っていなかったという自信の裏返しです。
しかし、その自信が強いほど、環境の変化に気づくタイミングは遅れやすくなります。
売上や採用の数字にじわじわと表れる違和感を、一時的な揺れとして片付けてしまう経営者を、私は幾度か見てきました。
問題は、その気づきの遅れが、経営者一人の頭の中に判断を集中させ続ける結果につながる点です。
長年の勘と経験だけで会社を回してきた経営者ほど、その判断がなぜ正しいのか、言葉で説明する機会を持たずに来ています。
だからこそ、後継者候補が現れても、何を引き継げばいいのか、本人にもうまく整理できていないのです。
実際、東京商工リサーチの調査では、後継者難倒産のうち、資本金1000万円未満の小・零細企業が6割以上です。
規模が小さい会社ほど、経営者個人への依存が強く、代表が倒れた瞬間に機能が止まりやすくなります。
ここで誤解してほしくないのですが、変わるとは、これまでの経験を否定して、ゼロからやり直す決断ではありません。
大切なのは、自分がすでに持っている経験の中で、今も通用する部分と、時代に合わせて渡せる形に変換すべき部分を切り分ける作業です。
何を大事にして意思決定してきたのか、どこで迷い、何を優先してきたのか。
これらを整理しないまま後継者や社員へ引き継ごうとしても、伝わるのは表面的な業務手順だけになりがちです。
私自身、10年横ばいだった会社を3年で立て直した経験があります。
その過程で痛感したのは、経営者である自分が変わらなければ、周囲も変われないという現実でした。
判断を自分の中だけで抱え続ける限り、組織はいつまでも経営者の器を超えられません。
私がクライアントの経営者と向き合うとき、必ず行う工程があります。
ホワイトボードを使い、頭の中にある判断基準を、その場で見える形にしていく対話です。
何を守り、何を変えるべきか、経営者自身の言葉で書き出していくと、後継者や社員に渡すべき軸が明確になります。
実際にこの対話を重ねた経営者からは、「自分の考えが、初めて言葉になった」という声を数多くいただいています。
変わりたいのに変われないのは、能力の課題でも、意志の弱さの課題でもありません。
ただ、自分の経験を渡せる形にする方法を、まだ知らないだけです。
まずは、自分がこれまで積み上げてきた判断の軸を、一度書き出してみてください。
守るべき部分と、手放すべき部分が見えてきたとき、後継者や社員との距離は確実に縮まります。
すべてを一人で抱え込む必要はありません。
社外の視点を交えて整理するだけで、これまで見えなかった判断の癖が、はっきりと浮かび上がってきます。
40代・50代からの変化に、遅すぎる年齢はありません。
会社の未来のために、早めに整理していきましょう。


