「ECの注文を店舗で受け取りたいと言われたがシステムが対応していない」
「返品処理で店舗とEC部門が責任を押し付け合う」
こうした声が経営会議で上がるたびため息をつく経営者の方も多いのではないでしょうか。
システム投資を検討する前にまず見直すべきは組織の仕組みです。
解決策は明確です。
店舗とECを束ねる責任者、会議、KPI、運用ルールの4つを整備すれば連携は動き出します。
高価なシステムがなくても意思決定の流れさえ作れば現場は自然と協力し始めます。
部門の壁は技術の問題ではなく組織設計の問題だからです。
今回は中小小売業が陥りやすい縦割り組織の弊害と
30日で着手できる実践的な改革手順を解説します。
なぜ店舗とECは永遠にすれ違うのか
オムニチャネルが機能しない理由は単純です。
店舗は店舗売上だけECはサイト売上だけを追いかけているからです。
評価指標が違えば協力する理由がありません。
むしろお互いの成果を奪い合う競合関係になってしまいます。
アパレルチェーンのA社の事例を紹介します。
EC部門が始めたアプリ限定セールで店舗スタッフは値引き対応に追われました。
「なぜアプリだけ安いのか」という顧客への説明で接客時間は倍増します。
しかもECで買った商品の返品は全て店舗で受け付ける決まりでした。
在庫配分もEC優先で店舗の売れ筋商品は常に品切れです。
店長会議は愚痴を言い合う場になり建設的な議論は消えました。
最も深刻な問題は誰も全体の采配を振る権限を持っていない点でした。
経営者はシステムへの投資を考えがちですが
この組織構造を放置したままではどんな優れたツールも宝の持ち腐れです。
部門の評価基準が対立している限りデータ連携だけでは解決しません。
さらに中小企業特有の課題もあります。
大企業のように専任のオムニチャネル推進室を作る余裕はありません。
限られた人員で既存業務と並行して改革を進める必要があります。
だからこそ最小限の仕組みで最大の効果を生む設計が求められます。
30日で連携を生み出す4つの仕掛け
組織を変えるには精神論ではなく仕組みが必要です。
以下の4つを順番に整備すれば1か月後には変化が見え始めます。
1)責任者を1人だけ決める
店舗とECの両方に指示を出せる責任者を経営直下に1名配置します。
営業部長の兼任でも構いません。
重要なのは経営会議で正式に任命し権限を文書化する点です。
なんとなくの調整役では誰も言うことを聞きません。
2)会議を短く、議題を絞る
週1回30分のオンライン会議を設定します。
参加者は責任者と店舗代表そしてEC代表の3名だけです。
議題は
- 顧客からのクレーム対応
- 在庫の融通
- 翌週の優先事項3つに限定します。
パワーポイントは不要です。
画面共有でデータを見ながらその場で決断します。
3)共通の成績表を作る
部門別の売上目標は残しつつ全員で追う共通指標を3つ設定します。
例えば「会員化率」「リピート率」「チャネルをまたいだ購入率」です。
店舗もECも同じ数字を見れば対立より協力が合理的になります。
4)もめる業務は先にルールを決める
返品、在庫の融通、店舗受け取りは必ず問題になります。
詳しいマニュアルは後回しでよいので
- 誰が決めるか
- 費用は誰が負担するか
- 例外はどう判断するか
これだけA4用紙1枚に明記します。
日用品小売企業B社では営業部長をオムニチャネル責任者に任命し週次会議を開始しました。
共通KPIとして3つの指標を設定し返品ルールを1枚にまとめました。
その結果 2か月で部門間の衝突は7割減少しました。
店舗スタッフからEC部門への苦情はほぼなくなりました。
システム投資はゼロでしたが売上は前年比で8%増加しました。
今日のまとめ
オムニチャネルの失敗は技術の問題ではなく組織設計の問題です。
店舗とECが別々の目標で動く限りどんなシステムを入れても無駄になります。
まず責任者を決め会議を効率化し共通の指標を設定し摩擦が起きる業務のルールを決める。
この4つを整えれば中小企業でも確実に前進できます。
大切なのは完璧を求めずまず動き出す決断です。


