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ブログ / AI経営の実践ガイド

第42話 AIの答えが多すぎて、余計に迷う経営判断

2026年8月25日 執筆:渡邉ひとし

【「AIに聞くたびに答えが違う」を防ぐ、経営者が今すぐ決めるべき2つのルール】

ChatGPTに聞き、Geminiに聞き、Claudeにも聞いてみたら、答えが三つとも微妙に違った。そんな経験は、あなたにもないでしょうか。

商工組合中央金庫が2025年12月から2026年1月にかけて調査を実施しました。

取引先中小企業10,772社に送付し、3,892社から有効回答を得ています。

生成AIの利用実態を尋ねたところ、最も多かった回答は、会社での導入なし使用は個人の判断に任せるでした。

この回答は64.9%にのぼりました。

会社として主導的に導入している企業と、個人登録のAIを推奨している企業を合わせた、積極活用層は31.1%にとどまっています。

つまり多くの会社では、社員一人ひとりが、それぞれ違うAIに、それぞれ違う聞き方で相談しています。

誰がどのAIに何を聞いたのかさえ、社内で共有されていない会社は少なくありません。

社員がAIに相談し、それらしい答えを持ってきても、上司はその答えを検証する基準を持っていません。

結局のところ、AIがそう言うならという理由で、判断が曖昧なまま通ってしまいます。

逆に、別の社員が違うAIから違う答えを得ていた場合、今度はどちらを信じればよいのかで会議が止まります。

声の大きい方の意見が通るだけの会議になれば、AIを導入した意味も薄れていきます。

同じ調査の自由記載欄にも、気になる声が寄せられています。

使い方を各自に任せた結果、実際に活用しているのは、ごく一部の社員にとどまりました。

多くの社員は、何に使えばよいのか、イメージすら持てていないという内容です。

道具を配っただけで、使い道を示していない会社の姿が浮かび上がります。

同じ調査では、積極活用層のうち会社が主導して導入した企業は、経営へのプラス効果を感じている割合が34.6%にのぼりました。

個人登録にとどまる企業は24.3%で、10ポイント以上の明確な差がついています。

導入後の課題としても、社内ルールや方針整備が追い付かないが25.1%で最多でした。

数字を改めて見てみると、AIの性能不足ではなく、会社としての受け皿づくりの遅れが、はっきりと浮かび上がります。

私はこれまで、戦略立案から事業計画、AI活用の実装まで、経営者の判断を整理する支援を続けてきました。

社員が判断に迷う場面の多くは、能力不足ではなく、権限のあいまいさが原因でした。

AIという新しい情報源が加わり、この曖昧さはさらに広がっています。

誰が最終判断をするのか、AIの答えをどこまで参考にしてよいのかが決まっていなければ、社員は安心して動けないのです。

私自身、20代の頃に効率や成果を優先しすぎて、周囲との関係に軋轢を生んだ経験があります。

結論を急ぐ姿勢ばかりを重視すると、周りは置き去りになりがちです。

速さを優先するあまり、なぜその答えを選んだのかを誰も説明できなければ、社員の納得は得られません。

納得のないまま進んだ判断は、あとになって思わぬ形で現場の抵抗として返ってきます。

この処方箋は二つです。

まず、AIの答えを最終判断にそのまま使ってよい範囲を、会社として決めます。

次に、答えが割れたときに誰が判断するのかを、あらかじめ決めておきます。

私が支援の場でホワイトボードを使うのも、この迷いを見える形に変えるためです。

複数のAIの答えをその場で書き出し、共通している部分と、割れている部分を分けて整理します。

共通している部分は確度の高い情報として扱い、割れている部分こそ人間の経験や現場感覚で埋めるべき箇所です。

「マネジメントとは人にかかわることである」とピーター・ドラッカーは述べています。

AIがどれほど賢くなっても、最後に責任を持って判断するのは『人』です。

私が事業計画づくりで、『数字』と『物語』の両方を大切にしているのも、同じ理由からです。

何を根拠に、誰が、なぜ選んだかを言葉にして残す作業が、次の判断への財産になります。

この振り返りは、うまくいった判断も、外れた判断も、どちらも次の基準づくりに役立ちます。

個人任せのままでは、貴重な経験が誰にも蓄積されず、そのまま消えていきます。

AIの回答が多すぎて迷うという悩みは、経営者一人の問題ではありません。

判断の材料が急に増えた時代に、会社としての受け皿がまだ整っていないだけです。

完璧な運用ルールを最初から目指す必要はありません。

まずは今抱えている一つの判断について、どのAIに何を聞き、どこまで信じるかを決めるところから始めれば十分です。

もし社員がAIの答えを持ってきたら、まずは一言、「この判断は誰が最終的に決めるか」を確認するところから始めてみてください。

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

経営戦略・組織変革・AI活用を、実務と心理の両面から支援しています。中小企業の経営者の方には、訪問またはオンラインで、ご相談をお受けしています(初回は無料)。

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