【AI利用率54.3%でも専門職だけ横ばい】中小企業に潜む世代間ギャップの正体
若手社員が、ChatGPTで企画書を10分で仕上げている。
自分は今夜も、パソコンの前で唸っている。
社内に「AIを使え」と号令をかけたのに、盛り上がっているのは一部の若手だけです。
この現象こそ、経営者が最も向き合うべき課題です。
「若手はどんどん使う、自分だけが置いていかれる」
そう感じているなら、原因は意欲不足ではなく、「使いこなす場」の設計にあると疑ってみてください。
パーソル総合研究所は、2026年7月22日に調査結果を発表しました。
正規雇用者の生成AI利用率は、54.3%まで伸びています。
半年前の調査と比べると、12.4ポイントの増加です。
管理職層は、軒並み10〜17ポイント伸びました。
一方で、専門職・エキスパート職だけは、35.2%から35.7%へとほぼ横ばいでした。
若手や管理職が引っ張る一方で、経験を積んだ層ほど足踏みしています。
この差は現場の「判断速度の差」として、やがて表れてきます。
帝国データバンクが2026年3月に実施した調査でも、生成AIを活用する企業は34.5%にとどまりました。
社内の「使いこなし格差」を実感している企業は、18.8%にのぼります。
多くの経営者が、導入した時点で満足しています。
社内の温度差までは、踏み込めていないのが現状です。
「使わない社員が悪い」と発破をかけるだけの経営者は、少なくないはずです。
しかし、それでは問題は解決しません。
ベテラン社員がAIに近づかない理由は、意欲不足ではないからです。
失敗を人前でさらす恐れが大きいのです。
長年、正確な仕事で信頼を築いてきた社員ほど、慣れない道具で間違える姿を見せたくないと感じています。
経営者自身も、実は同じ心理を抱えていないでしょうか。
役職が上がるほど、弱みを見せにくくなります。
広告制作の現場で、6万件を超える案件に関わってきました。
独立後も、1,200件を超える経営相談に対応しています。
人が動かない理由は、能力の欠如ではありません。
「安心して試せる場」が用意されていないだけです。
だからこそ、まず経営者自身が教わる側に回ってください。
社内で最もAIを使いこなす若手社員に、1回15分ほどのレクチャーを頼んでみましょう。
素直に教えてほしいと伝えるだけで、社内の空気は変わり始めます。
経営者が学び続ける姿を見せれば、ベテラン社員も、今からでも遅くないと感じやすくなります。
そのうえで、組織としての仕組みも同時に整えてください。
第一に、失敗しても責められない練習の時間を、業務時間内に確保します。
第二に、AIの活用をいきなり評価に結びつけず、まずは使ってみた社員を称賛するところから始めます。
第三に、教える役割を若手だけに担わせず、ベテラン社員の業務知識と若手の操作感覚を組み合わせる場を設けます。
この3つは、どれもすぐに着手できます。
ただし、ここで一つ注意が必要です。
帝国データバンクの同じ調査では、生成AI活用の最大の懸念として、「情報の正確性」を挙げた企業が50.4%にのぼりました。
出てきた答えを無条件に信じるのは、世代を問わず危険です。
数字の違和感に気づく感覚は、長年現場で判断を重ねてきたベテラン社員のほうが持っている場合もあります。
パーソル総合研究所の別の調査では、生成AIの活用によって、業務時間が平均16.7%削減されたと報告されています。
しかし、実際に削減を実感できたのは、利用者のうちわずか4人に1人にとどまるとも指摘されています。
仕組みを作った経営者が満足して手を止めれば、効果は一部の社員にしか広がりません。
月に一度は、利用の様子を確認してください。
置き去りになっている社員がいないか、目を配り続けてください。
年齢を重ねた経営者ほど、新しい道具に慣れるまで時間がかかります。
しかし、それは能力の差ではありません。
これまで培ってきた判断力や現場感覚が、AIという新しい道具と、まだ結びついていないだけです。
今からでも、遅くはありません。
若手の力を借りながら、経験と新しい道具を掛け合わせてください。
あなたの会社が世代を超えて前に進むのを、応援しています。


