緊急事態宣言の再発令から1週間ほど経過しますが感染拡大は収まらないばかりか大阪、京都、兵庫、愛知、岐阜、栃木、福岡も加わり11都府県に発令地域が広がりました。
『ワーク・ライフ・バランス』の言葉が使われるようになっておよそ20年になりますがその考え方は多様性を帯びていくつもの志向性が生まれています。
コロナ禍でテレワークが日本でも広がっていますが在宅勤務の定着を望む声は強くアフターコロナの時代にも常態化していくと思われます。
副業や兼業を容認する企業や推薦する企業も出始めています。
ワーケーションといった新しい働き方を実施している企業もあります。
どんなワーク・ライフ・バランスをこれから目指すのか考えておく必要がありそうです。
中小企業も大企業も日本の市場に於いては同じ『外部環境』のもとで懸命に営業活動をしています。
大企業の課題や経営手法を観察することで自社の経営に活かしてください。
今日の企業事例は第425話<クラレ>です。
(*写真はイメージです。)
<倉敷紡績>の経営多角化を目的に創業1926年に大原孫三郎氏が岡山県倉敷市に<倉敷絹織>を創業しました。
1943年に<倉敷航空化工>に商号を変更しました。
1945年に<倉敷絹織>に商号を復帰しました。
1949年に<倉敷レイヨン>に商号を変更しました。
1970年に<クラレ>に商号を変更しました。
2007年に『繊維製品』から『化学』に株式の所属業種を変更しました。
2012年に産業用ポバールフィルムを扱う米国<モノソル>を買収しました。
2015年にバリアフィルムを扱うオーストラリアの<プランティック>を買収しました。
<クラレ>のビジネスモデル2019年9月に<住友商事><グローバルケミカル>とタイで新工場の地鎮祭を開きました。
自動車や電気製品の部品などに使われる耐熱性樹脂『ジェネスタ』のほか日用品などに使われる熱可塑性の合成ゴム『セプトン』を製造します。
「タイは自動車や電機メーカーなどが集積し消費地に近い」「タイの<PTTグローバル>からの原料供給も安定している」と<クラレ>の伊藤正明社長は述べています。
2019年9月に生分解性プラスチック事業の売上高を5倍に引き上げる計画を表明しました。
生分解性プラスチック『プランティック』は植物由来の樹脂素材ですが2020年から米国で販売を開始し2026年までに欧州に広げることも検討し2026年に2019年見通し比5倍の売上高を計画しています。
2019年10月に<富士通ゼネラル>などと『着るクーラー』を開発しました。
ベスト型の衣服にリチウムイオン電池を内蔵し2時間以上連続して首を冷やして体温を下げることができます。
建設作業員などの利用を見込み2020年夏にも試験販売する考えです。
<WINヒューマン・レコーダー>や<富士通ゼネラル>と共同開発しました。
2019年10月に米国工場で発生した火災事故に関し和解金を支払うことで基本合意しました。
2018年5月に米国の工場で発生した火災事故に関して被害者である従業員の一部に9200万ドル(約100億円)の和解金を支払うことで基本合意しました。
2019年11月に『2019年12月期』の連結純利益が前期比15%減の見込みと発表しました。
テレビなど液晶ディスプレーに使う光学フィルムが液晶パネルの在庫調整の影響をうけて想定より数量が落ち込など主力のフィルムや樹脂の低迷に加え2018年5月に米子会社で発生した火災事故について損害賠償費用約140億円を特別損失に計上することが影響しています。
2019年11月に<公正取引委員会>より課徴金納付命令が出されました。
浄水施設などで使われる特定活性炭や特定粒状活性炭の納入で談合を繰り返したため独占禁止法の規定に基づき<クラレ>など11社に対し課徴金納付命令が出されました。
活性炭は炭化させた木材などを約千度の高温で水蒸気と反応させるなどして製造し内部の微細な穴にさまざまな物質が吸着する性質を生かして水や大気から異臭物質や有毒ガスを除去します。
2019年12月にタッチパネル大手<NISSHA>との樹脂製品の共同開発を表明しました。
<クラレ>の人工皮革『クラリーノ』と<NISSHA>のセンサー付き樹脂素材を組み合わせます。
2020年に国内外の<NISSHA>の工場で生産を開始し高級車の内装用やデザイン性の高い家電向けに販売する考えです。
2020年2月にポーランドで包装用フィルムの新工場を建設すると発表しました。
このフィルムの生産拠点を米国・英国の2カ国から増やし供給力を高める考えです。
洗剤や薬剤を個別に包装する用途で需要が広がっているため2022年の稼働を目指しています。
「2~3年は10%近い伸びが続く」と需要見通しついて<クラレ>の伊藤正明社長は述べています。
2020年2月に『2019年12月期』の連結最終損益が20億円の赤字の見込みと発表しました。
業績の下方修正は5回目で通期決算が最終赤字となるのは41年ぶりとなります。
2018年に米国子会社で発生した火災事故に関して和解金や弁護士費用などの訴訟関連費用を特別損失として計上するのが赤字転落の主な要因です。
2020年5月に『2020年1~6月期』の連結純利益が前期比47%減との見通しを示しました。
従来は21%増を想定していましたが新型コロナウイルスの感染拡大で自動車や電子デバイスディスプレー向けなどの製品が落ち込んでいます。
2020年5月に展示会が開けずインターネット上に特設サイトを設けました。
自動車部品向けの素材をアピールする展示会を開催していましたが新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためインターネット上に特設サイトを設け国内外から5000を超えるアクセスがあるなど成果はありました。
「面識が無い新規客はオンライン商談に乗り気ではないことが多い」と経営企画室今宮智子氏は述べておりオンライン営業の課題も見えてきています。
2020年6月にマスク用の不織布を増産すると発表しました。
岡山県の工場に追加投資してマスク用フィルターも生産可能にし新型コロナウイルスの感染拡大の影響により特に不足している医療用マスク向けの高性能フィルターなどを作ります。
2020年6月に米国子会社で活性炭の生産設備を増強すると発表しました。
活性炭は石炭やヤシ殻を原材料とした物質の表面に微細な穴をあけた炭素材料ですが穴の大きさや形状に応じて水や大気の浄化が可能で米国の浄水場などで需要が伸びています。
2020年12月に『2020年12月期』の連結最終損益がゼロの見込みと発表しました。
2021年1月1日付で伊藤正明社長は代表権のない会長に就き川原仁取締役常務執行役員が社長に昇格します。
今日の企業事例である<クラレ>を少し俯瞰して見てみましょう。
2020年10月に炭素繊維強化プラスチック市場に本格参入しました。
炭素繊維強化プラスチックは炭素繊維と樹脂を組み合わせて製造しますが<クラレ>は炭素繊維を外部で調達して自社製の樹脂と合わせて開発します。
自社製の樹脂を活用することで生産コストを従来の半分以下に圧縮することができるため車の軽量化などにつながる炭素繊維強化プラスチックの価格面での訴求力を高められます。
スポーツ用途から販売先を増やし2030年にも自動車の主要部材での採用を目指します。
海洋プラスチックごみはペットボトルや食品容器などがすぐ頭に浮かびますが日本に漂着する全体の4割を占めているのは漁具です。
そのため2018年10月から水産商社の<ニチモウ>と組み生分解性プラスチック製の漁具を開発しています。
カキの養殖場で水中につるす養殖用のパイプに生分解性プラスチックを使う実験に取り組んできました。
パイプが劣化で折れたり欠けたりした場合にも海底に沈み土の中で水と二酸化炭素に分解されごみが出ないのが特徴です。
将来は環境意識の高い欧米などでの展開も視野に入れ環境負荷の少ない漁具を核にした技術で新たなビジネスを生む狙いです。
『2019年12月期』の連結業績見通しを振り返ると景気減速などを理由に5度に渡って下方修正しました。
さらに米国での火災事故による特別損失を計上して41年ぶりの最終赤字に転落しました。
ニッチな産業に強みをもち化学メーカーの中では比較的景気に業績が左右されにくい高収益企業とされてきました。
時代の変化にも適応し祖業の繊維事業から主力事業を化学へとシフトしてきました。
2021年1月1日付で社長に昇格した川原仁取締役常務執行役員のもとで市場からの信頼を回復するためにどのような手を打つことができるか当面の課題となります。


