東洋思想では古来より『蓮の花』は泥の中から美しい花を咲かせることから困難を乗り越え成長する象徴とされてきました。
いまの日本経済は『成熟化』という名の泥の中に在ると言えるかもしれません。
少子高齢化や人口減少そして長引くデフレからの脱却。
これらの要因が絡み合い国内市場はまさに『停滞の池』と化しています。
しかし蓮の花が泥の中から美しい花を咲かせるように企業はこの困難な状況から新たな成長の芽を見出せます。
例えば今日の事例企業である<大和ハウス工業>です。
国内市場の成熟化をいち早く察知し米国市場へと果敢に挑戦しています。
また住宅建設という枠組みに捉われず多角化を進めています。
このように国内市場の成熟化は企業にとって大きな試練ですが同時に新たな挑戦と成長の機会でもあります。
困難な状況からこそ企業は真の創造性を発揮し新たな価値を生み出すことができます。
中小企業も大企業も日本の市場に於いては同じ外部環境のもとで懸命に営業活動をしています。
大企業の課題や経営を観察することで自社に活かしてください。
次回も企業のビジネスモデルを取り上げその成功要因や課題について深堀りしていきます。
今日の企業事例は第504話(画像はイメージです)ミッション、ビジョン、バリュー【社是】グループの根幹を成す考え方であり将来にわたって私たちが共有すべきものです。
一、事業を通じて人を育てること一、企業の前進は先づ従業員の生活環境の確立に直結すること一、近代化設備と良心的にして誠意にもとづく労働の生んだ商品は社会全般に貢献すること一、我々の企業は我々役職員全員の一糸乱れざる団結とたゆまざる努力によってのみ発展すること一、我々は相互に信頼し協力すると共に常に深き反省と責任を重んじ積極的相互批判を通じて生々発展への大道を邁往すること
【社員憲章】私たちの行動の指針であり日々の活動において常に意識すべきものです。
私たちは「人・街・暮らしの価値共創グループ」の社員として一、品質、技術、情報力の向上に努め環境に配慮した安全で確かな商品安らぎとくつろぎの空間を提供します。
(企業の視点)一、誠意をもってお客様と向き合い感動と喜びを分かち合います。
(お客様の視点)一、社会規範に基づく公明正大な行動により社会的評価を高め企業価値の向上に努めます。
(株主の視点)一、感謝の気持ちを忘れず公正であることに努め取引先と共に成長・発展を図ります。
(取引先の視点)一、仕事を通じて自らの成長と幸せを追求します。
(社員の視点)一、「共創共生」を基本姿勢に心豊かに生きる暮らしと社会の実現を目指します。
(社会の視点)【パーパス(将来の夢)】創業100周年に向けた私たちの新たな羅針盤です。
「生きる歓びを、未来の景色に。」
生きる歓びを分かち合える世界の実現に向けて再生と循環の社会インフラと生活文化を創造する。
【大切にしたい価値観】将来の夢を実現し世界から愛される大和ハウスグループとなるために私たちが大切にする価値観です。
1 先の先を読み、自ら変化を起こす。
まだ見ぬ未来を、ワクワクする未来へ。
自ら変化を起こし新たな流れを創り出します。
2 成功も失敗も、夢への糧にする。
挑むことは、夢への糧。
失敗を恐れず、一歩を踏み出します。
3 異なりを歓迎し、輝きあう。
多様性を活かし、創造のよろこびを。
個性をつなげあい、より輝きを広げます。
4 温かさをもって考え強さをもってやり抜く。
人と社会と共に、温かい心で。
情熱と意思をもって最後までやり抜きます。
5 夢を実現するひとりとして人生を楽しむ。
主役は、自分。
未来の景色を創る当事者として人生を楽しみます。
多角経営で未来を拓く総合ハウスメーカー1947年に「すぐに建てられる丈夫な住宅」を目指し創業者の石橋信夫氏が事業を開始しました。
1955年に<大和ハウス工業>を設立しました。
1959年に日本初のプレハブ住宅『ミゼットハウス』を発売しました。
1978年に『能登ロイヤルホテル』をオープンしホテル経営を開始しました。
1980年にホームセンター事業に参入しました。
2008年10月に北関東最大級のショッピングセンター『iiasつくば』を開業しました。
2012年に<東電ライフサポート>を子会社化しました。
2013年に<フジタ>と<コスモスイニシア>を子会社化しました。
2015年に<大和小田急建設>を完全子会社化しました。
<大和ハウス工業>のビジネスモデル2023年2月に戸建住宅用に防犯カメラ付きの宅配ボックスを開発したと発表しました。
インターホンも一体化して配送業者など来客の映像を録画してスマホ専用アプリで確認できます。
自動応答設定が可能な宅配専用ボタン付きのインターホンと24時間防犯カメラを備えた今回の新製品は宅配ボックス大手の<ナスタ>と共同開発しました。
2023年3月に戸建て住宅のビジネスモデルを転換すると表明しました。
完成済みの建物を販売する建売住宅の割合を5割超に引き上げ顧客の要望に応じて設計する注文住宅の割合を下げます。
商談から引き渡しまで時間がかかる注文住宅は高騰する建材や人件費の価格転嫁がしにくく利益率が悪化しています。
需要減の注文住宅から建売住宅市場に軸足を移します。
建売住宅の2026年度の販売戸数は2021年度比で3倍超となる5000戸程度を目標にします。
全国に80カ所程度ある事業所で建売住宅向けの用地を取得する担当者を配置しました。
注文住宅の営業担当者が建売住宅も兼任していた仕組みを改め建売住宅の専任担当者を置く考えで4月からは全国を11の地区に分け住宅事業の責任者を配置します。
2023年4月に定年後に嘱託社員として再雇用する制度を拡充しました。
65歳で定年退職した社員を再雇用する制度で4月から月給を最大35万円に引き上げました。
1級建築士や施工管理技士などの資格を持つ技術系の人材が対象で従来は週4日勤務で月給は一律20万円でしたが週5日勤務も可能にしました。
人手不足で工事が遅れる事例も発生しておりシニア人材を積極的に活用します。
2023年4月に北九州市の火力発電所を買収しバイオマス発電への参入を発表しました。
従来は石炭とバイオマス燃料の混焼で発電していますがすべてバイオマスに切り替え2026年4月に運転開始を目指します。
太陽光や風力での発電を手掛けてきましたがバイオマス発電に参入しグループ全体で再生可能エネルギーの発電量を増やす考えです。
2023年5月にホームセンターの売上高を現状の2倍に引き上げる方針を表明しました。
2030年度までに営業利益も2倍超の100億円を目指します。
職人が使う工具などの商品が充実したプロ向け店舗数を約3倍に増やします。
ドラッグストアなどと競争が激しくなる日用品から成長するプロ向け商品にシフトし運営する職人向けのホームセンターの店舗数を現在の10店から2030年度までに30店に拡大します。
職人が使う電動工具や作業着などは利益率が高いPBの開発も進め商品の品ぞろえを増やす方針です。
2023年8月に熊本県に九州初となる工業団地の開発を始めると表明しました。
半導体受託生産の世界最大手<TSMC>の工場建設が進む熊本県の工場用地不足に自治体の対応が追いついていないため近接する未利用地の約8ヘクタールを取得しました。
土地は建築条件付きで販売し工場などの設計や施工を担う狙いです。
2023年10月に社用車3000台のほぼ全てをEVに切り替えると表明しました。
2030年度までにグループ全体で使う社用車を切り替え社員が営業に使用する自家用車も手当を支給しEVの購入を促します。
2023年11月にビジネスホテルの投資を再加速すると表明しました。
『ダイワロイネットホテル』の新築や改修で2026年度までに合計で約500億円を投じます。
2030年度までに国内約10カ所でホテルを増やします。
Afterコロナで『2024年3月期』はビジネスホテル事業が4期ぶりに黒字転換する見通しです。
2024年6月に社内起業制度を導入し300億円の投資枠を設定しました。
5万人のグループ全社員から新ビジネスの候補を募り社員間で事業性など起業の可否を審査します。
明確な投資枠を設けることで社員の起業への意識を高めるのが狙いです。
2024年5月に発表した『2024年3月期』の連結売上高は前期比6%増で初の5兆円超えでした。
「大和リゾートなどを売却したがそれを除いても5兆円を確保できたのは大きい」と<大和ハウス工業>の芳井敬一社長は述べました。
2024年7月に札幌ドームのネーミングライツを取得したと発表しました。
8月から4年間の札幌ドームの愛称は『大和ハウス・プレミストドーム』。
命名権取得でマンションブランドの認知度を向上する狙いです。
2024年8月に大阪湾岸部で冷凍・冷蔵機能を備えた物流施設を開発すると表明しました。
冷凍食品の消費が拡大する一方で関西で複数のテナントに貸す大規模な低温倉庫はまだ少なく2026年までに2件を供給するなど先行して需要を取り込む考えです。
今日の企業事例である<大和ハウス工業>をもう少し俯瞰してみましょう。
住宅建設からスタートし商業施設、物流施設、ホテルさらにはデータセンターや再生可能エネルギー事業へとその事業領域を拡大してきました。
その戦略の根幹にあるのは多角化とグローバル展開です。
国内市場の成熟化を見据え早くから海外とりわけ米国市場に目を向けM&Aを積極的に活用して事業基盤を築いています。
また建設業という枠組みに捉われず不動産開発や管理さらには再生可能エネルギー事業といった多様な収益源を確保することで市況変動リスクを分散し安定的な成長を実現しています。
違う視点で注目すべきは社会貢献を重視している姿です。
創業者の『事業を通じて人を育てる』という考えのもと社員の成長を促す社内起業制度を導入し300億円の投資枠を設けています。
また地域社会への貢献として老朽化した団地の再生や物流施設を災害時の避難場所として活用する取り組みも積極的に行っています。
これらから<大和ハウス工業>の経営スタイルは「多角化とグローバル展開による持続的成長」と「社会貢献を通じた企業価値向上」の両立を目指したものと言えます。
今回の企業事例は私たち中小企業の経営者にとって多くの示唆を与えてくれます。
第一に事業ポートフォリオの多角化の重要性。
一つの事業に依存するのではなく複数の収益源を確保することで経営の安定性を高めることができます。
第二にグローバル市場への挑戦。
国内市場が縮小する中海外市場への進出は新たな成長機会をもたらします。
第三に社会貢献と企業価値向上の両立。
企業は利益追求だけでなく社会課題の解決にも貢献することで持続的な成長を実現できます。
もちろん大企業と中小企業では経営資源や事業規模が異なります。
しかしこの戦略のエッセンスは中小企業にも応用可能です。
例えば以下の3つが挙げられます。
- 自社の強みを活かせる新たな事業領域を見つけ出すこと。
- 海外市場への進出を検討すること。
- 地域社会への貢献を通じて企業価値を高めること。
今回の<大和ハウス工業>のビジネスモデルは変化する事業環境に対応しながら持続的な成長を目指す企業の理想像を示しています。
常に未来を読んだ変化を起こし夢への糧として挑戦し続ける。
そして人と社会と共に温かさをもって考え強さをもってやり抜くこと。
これらの価値観こそが激動の時代を生き抜き未来を創造していくための鍵となるのではないでしょうか。
今回の企業事例を参考に経営戦略コンサルタントとして中小企業がそれぞれの強みを活かし持続的な成長を実現できるよう全力で経営をサポートすることを心に誓いました。


