東洋思想において『変化』は『無常』と捉えられています。
万物は常に変化し同じ状態に留まることはありません。
これは私たち人間を含むこの世のあらゆる存在に共通する真理です。
企業もまたこの『無常』の法則から逃れることはできません。
市場や顧客のニーズ競争環境や技術革新など企業を取り巻く状況は常に変化しています。
このような変化に対応できず過去の成功体験にしがみついている企業はいずれ衰退していく運命にあります。
では企業はどのように変化に対応していけばよいのでしょうか?
それは『変わり続けること』です。
常に変化を恐れず積極的に新しいものを取り入れ進化していくのが企業の持続的な成長には不可欠です。
今回は『企業事例』として<TDK>のビジネスモデルを取り上げます。
中小企業も大企業も日本の市場に於いては同じ外部環境のもとで懸命に営業活動をしています。
大企業の課題や経営を観察することで自社に活かしてください。
次回も企業のビジネスモデルを取り上げその成功要因や課題について深堀りしていきます。
今日の企業事例は第505話(画像はイメージです)ミッション、ビジョン、バリュー【社是】創造によって文化、産業に貢献する【社訓】「夢」「勇気」「信頼」「夢」常に夢をもって前進しよう。
夢のないところに、創造と建設は生まれない。
「勇気」常に勇気をもって実行しよう。
実行力は矛盾と対決し、それを克服するところから生まれる。
「信頼」常に信頼を得るよう心掛けよう。
信頼は誠実と奉仕の精神から生まれる。
【長期ビジョン】「TDK Transformation」サステナブルな未来のために、TDKは変わり続ける
- 独自の材料・プロセス・ソフトウェアを組み合わせた電子デバイスで、テクノロジーの進化と社会の変革を加速し、サステナブルな未来の実現に貢献します
- 自己を変革し続け、世界のお客様と共に成長するNo.1パートナーになります
磁気ヘッド外販で世界トップ1935年12月に齋藤憲三氏がフェライトの工業化のため<東京電気化学工業>を設立しました。
1953年10月にオープンリールテープレコーダー用の磁気録音テープで事業に参入しました。
1966年3月にオランダの<フィリップス>と契約しました。
1971年3月にクロムポジション用カセットテープを国産品初で発売しました。
1983年3月に社名を<TDK>に変更しました。
2005年10月に<デンセイ・ラムダ>を含むグループ各社を買収しました。
2017年5月に米国の<InvenSense>を子会社化しました。
2018年2月に米国の<Chirp Microsystems>を子会社化しました。
2022年4月にTDK秋田など国内3子会社を統合し<TDKエレクトロニクスファクトリーズ>を設立しました。
<TDK>のビジネスモデル2023年4月に電気信号のノイズ除去に使われるコモンモードフィルターの車載向け新製品を投入しました。
内部の設計を改善することで従来製品に比べノイズ除去効果を80%程度高めました。
自動車のセンシングカメラや高性能センサーなどで使われる高速信号処理の誤動作防止に役立ちます。
2023年4月に秋田県にかほ市の稲倉工場内に建築中の電子部品工場が完成しました。
新工場建設は2016年10月以来で新開発のメッキ工法を使いスマートフォンの充電器向け非接触コイルのほかクレジットカードなどに使われる近距離無線通信用アンテナを生産します。
2023年4月に高精度な磁気センサーの生産能力を倍増させると表明しました。
自動運転機能の高度化を背景に高精度センサーの需要が拡大していて競合する米中メーカーに先行するため供給体制を整え生産ラインを2025年半ばまでに増強します。
主力のリチウムイオン2次電池などに続く収益の柱に育てる考えです。
2023年5月に材料に関するデータを AI で解析するシステムを開発したと発表しました。
電子部品や2次電池(バッテリー)の新製品投入に生かします。
解析のスピードや精度が上がりより効率的に材料を開発できます。
2023年6月に脱炭素関連のスタートアップに投資する新たなキャピタルファンドを設立しました。
最大1億5000万ドルの運用総額で主力の2次電池事業と相乗効果のある新規事業の創出を目指します。
2023年7月に国内22カ所の生産開発拠点で使用する全電力を再生可能エネルギー由来に切り替えたと発表しました。
本社などを含む国内外の81拠点のうち半数超に当たる44拠点で再生エネ100%化が完了しました。
海外でも取り組みを進め2050年までにグループ全体の再生エネルギー比率を100%にする計画です。
2023年9月に産業用の蓄電システムに参入すると表明しました。
国内では脱炭素の流れや電気代の高騰を受け中小企業や商業施設でも太陽光発電設備の導入が進み蓄電設備の需要が高まっています。
気候変動で自然災害が起きやすくなっており蓄電の需要が見込めると判断しました。
緊急時でもすぐに設置できるよう小型サイズにして機動性を高めました。
2023年9月に高速通信規格5Gの基地局部品向けに温度センサーの新製品を開発しました。
基地局の光送受信機に内蔵される発光体レーザーダイオード(LD)の温度検知に使いますが自動車の車間距離を計測するのに使う高性能センサー用のLDでの採用も目指します。
2023年10月に次世代電流センサーの開発でスイスの大手<レム>と連携すると発表しました。
<レム>は電流センサーを手がける主要メーカーの一つで特に自動車向けと再生エネ設備をはじめとする産業機器向けに強く2020年代半ばにより高精度に電流を検知できる新たなセンサーの製品化を目指します。
2023年11月に電源回路向けインダクターで厚みを従来より3割薄くした製品を開発しました。
製品としては業界最薄で基板の高密度化を進める顧客のニーズに対応し腕時計型のウエアラブル端末やワイヤレスイヤホンなどでの採用を見込んでいます。
2024年1月に米国のタイヤ大手<グッドイヤー>と連携すると発表しました。
唯一道路と接する自動車部品のタイヤは新たなデータ源として注目されておりタイヤ向けの次世代センシングシステムを共同開発する考えです。
2024年3月に古い作業服をオフィス家具に再利用したと発表しました。
工場の作業員が使用していたブルゾンとズボン1100着分の繊維を9割使ったリサイクルボードに再加工しパーティションやテーブルなど4種類の家具にしました。
<TDKテクニカルセンター>のロビーなどに設置し活用しています。
2024年5月にスマートフォンの無線充電器向けコイルを開発したと発表しました。
充電の規格が異なるアンドロイドやiPhoneの両方に対応でき2025年1月から量産を始める予定です。
まずは自動車への採用を目指し充電スポットといった空港などの公共施設向けの需要も見込んでいます。
2024年5月に『2027年3月期』までに設備投資やM&A(合併・買収)など8500億円の成長投資をすると発表しました。
スマートフォン向けなど中小型電池に設備投資の46%を充当します。
電力消費量の多い生成AI を搭載した機種が普及し大容量の電池の需要が拡大すると推測しています。
2024年6月に2030年度までの温暖化ガスの排出削減目標について国際機関から認定を受けました。
2050年度までに国内外の製造拠点の電力を100%再生可能エネルギー由来にする目標を掲げています。
2024年10月に電力消費を抑えられる AI 半導体を2027年までに開発すると発表しました。
同等性能の画像処理半導体のAI処理と比べ消費電力を100分の1に抑えられます。
フランスの原子力代替エネルギー庁と組みデータの演算や保存を担う半導体素子『スピンメモリスタ』を開発しました。
デジタル処理するAIに比べ複雑な計算を効率的に実行できます。
今後は<東北大学>と組んで2027年までに実用化し2030年の量産技術の確立を目指します。
今日の企業事例である<TDK>をもう少し俯瞰してみましょう。
1935年12月に齋藤憲三氏がフェライトの工業化のために創業以来常に変化を続け成長を遂げてきました。
1950年代に磁気テープ1980年代にハードディスク用部品2000年代にリチウムイオン電池それぞれ時代の変化に合わせて主力製品を変えてきました。
そして現在センサー事業を新たな柱と位置付け成長を続けています。
TDKの強みは以下の3点に集約されます。
1)材料技術2)プロセス技術3)製品開発力これらの強みを活かして高品質な製品を開発し顧客に提供することで高い収益力を実現しています。
しかし中国経済の減速は業績に大きな影響を与える可能性があります。
またセンサー市場は競争が激化しており競争力を維持する必要があります。
さらに人材の確保に力を入れていくのが肝要です。
これらの課題を克服し持続的な成長を遂げていくため有望な海外市場の開拓を積極的に進めていくと考えられます。
またM&Aを活用して新たな技術や製品を獲得していくのも有効です。
今後も研究開発を強化し競争力の維持・向上を図るはずです。
『変わり続ける企業』であるため新たなビジネスモデルの構築を目指し変化を恐れずに挑戦していけば社会に貢献し続ける企業として存続できるはずです。


