【黒字なのに71.65歳で畳む社長たち】あきらめ廃業という現実が見えた「儲かっているのに、会社を畳む」そう聞くと、違和感を覚えるかもしれません。
しかし今も、この現象は全国で高い水準のまま続いています。
帝国データバンクの調査によると、2025年に休廃業・解散した企業は67,949件で、過去10年で2番目に多い水準でした。
前年からは減少したものの、依然として高い水準が続いています。
さらに見過ごせないのは、休廃業した企業のうち、黒字のまま畳んだ割合が5割に迫っている点です。
つまり、赤字だからではなく、利益を出しながら会社をたたむ経営者が、今も少なくないのです。
黒字廃業という言葉自体は、決して新しい概念ではありません。
以前から中小企業庁なども、後継者不在による黒字企業の休廃業を課題として取り上げてきました。
今回のデータは、その課題が10年たっても根本的には解消されていない実態を示しています。
なぜ、儲かっている会社が、自ら退場を選ぶのでしょうか。
同調査では、休廃業・解散を決めた経営者の平均年齢は71.65歳で、5年連続で70代となっています。
全盛期の頃に比べ体力や気力も衰え、後継者も見つからず、事業そのものが複雑になりすぎているのです。
帝国データバンクは、資金に余力があるうちに退場を選ぶ動きを『あきらめ廃業』と名付けています。
突然の倒産ではなく、自ら選んだ撤退である分、周囲は気づきにくく、静かに進んでいきます。
ただ、この現実は70代の経営者だけの問題ではありません。
経営者が「捨てる判断」を先送りする理由は、単純な怠慢ではないからです。
一つの事業には、社員の生活や長年の取引先との関係、自身の想い入れが重なっています。
「今は忙しいから、落ち着いたら整理しよう」という先送りが、そのまま何年も続くケースは珍しくありません。
そして先送りは、40代でも50代でも、まったく同じ形で始まっています。
気づいたときには事業同士が複雑に絡み合い、どこから手をつければよいか分からなくなるのです。
70代になって慌てて考えるのではなく、今のうちに身軽にしておく姿勢が、判断力そのものを保つ訓練になります。
私はこれまで1,200件を超える経営相談に対応し、複数の事業承継の現場にも関わってきました。
そこで痛感するのは、60代、70代になってからの事業整理の難しさです。
すでに複雑に絡み合い、身動きが取れなくなっている姿を、幾度も見てきました。
逆に、50代のうちから不要な事業や商品を手放してきた会社は、後継者にとっても引き継ぎやすい形が残っています。
そして、いざ会社を畳む場合でも、社員や取引先への影響を最小限に抑えられます。
具体的な進め方はシンプルです。
まず、紙かExcelシートに、今関わっている事業や商品をすべて横に並べます。
次に、それぞれについて「利益が出ているか」「自社の強みと重なっているか」を確認します。
さらに「自分がいなくても回せるか」も、ひとつずつ○ で埋めていきます。
最初は自分一人で書き出し、ある程度形になってから、右腕となる社員や後継者候補と一緒に見直すと精度が高まります。
一度で完璧に整理する必要はありません。
まずは全事業を並べる、この一手間だけでも十分な着手になります。
この三つがすべて揃う事業だけを残し、どれか一つでも欠ける事業は、縮小か撤退の候補として扱います。
渡す事業だけを磨き、完結させる事業は早めに整理していきましょう。
この線引きこそが、将来の「あきらめ廃業」を防ぐ、最も現実的な備えです。
儲かっているうちに畳むという選択は、決して恥ではありません。
しかし、そこに至る前に、まだできる整理は必ず残っています。
今、忙しさに追われているなら、それは会社を軽くする最後のチャンスかもしれません。
今日、手放せる事業や仕事を一つ、書き出してみてください。
その一歩が、10年後の会社とあなた自身を守ります。


