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ブログ / 事業家の羅針盤

第26話 儲かっているのに不安が消えない本当の理由

2026年8月6日 執筆:渡邉ひとし

【儲かっているのに不安が消えない本当の理由】「黒字」と「安心」を混同する経営者の共通点

決算は黒字です。それでも、このままでいいのだろうかという不安が、頭から離れない経営者は少なくありません。

社員の前では堂々と振る舞っていても、一人になった瞬間に、同じ不安が繰り返し頭をよぎる。

そうした感覚を、誰にも打ち明けられずにいる経営者は、実は多いのではないでしょうか。

こうした声は、業績が悪化した経営者よりも、むしろ業績が好調な経営者から聞かれる頻度が高いです。

数字が良いからこそ、逆に不安が強まる場合があります。

この論点は、一つに絞られます。

黒字という結果と、その黒字を支えている要因が来期も続くかどうかは、まったく別の話だという点です。

決算書の数字は、あくまで過去の結果を映した数字にすぎません。

にもかかわらず多くの経営者は、黒字を見て安心してよいと無意識に結びつけてしまいます。

この結びつけ方自体に、無理があります。

帝国データバンクが2026年4月に発表した調査があります。

2026年度に、増収増益を見込む企業は23.9%にとどまり、3年連続で減少しました。

つまり今、増収増益を実現できている会社は、およそ4社に1社にすぎません。

黒字を出している会社は、すでに希少な立場にあるといえます。

にもかかわらず、経営者本人の胸のうちは、決して晴れていません。

この落差にこそ、今回のテーマの本質があります。

同じ調査では、2026年度の業績を下振れさせる材料として、原油や素材価格の動向を懸念する企業が52.1%にのぼりました。

前年から大きく増えている数字です。

原油価格や為替、仕入れ単価の変動は、自社の努力だけでは制御できません。

電気代や物流費の上昇分を、価格へ十分に転嫁できていない会社であれば、今の粗利は来期も同じ水準を保てるとは限りません。

黒字という結果だけを見て安心するのは、むしろ不自然な反応だといえます。

この実感は、私自身の経営相談の経験とも重なります。

これまで1,200件を超える経営相談を受けてきましたが、相談に来られる方の多くは、業績が悪化した経営者ではありません。

むしろ好調な時期に、「このままでは不安です」と口にされる経営者のほうが目立ちます。

理由は明確です。今の利益を支えている要因を、言語化できていないからです。

不安を性格の弱さだと、自責する必要はありません。

それは経営者として、数字の裏側にまで意識が届いている証拠でもあります。

問題は、その不安を漠然としたまま放置している点にあります。

では、具体的に何をすればよいのでしょうか。

行動の起点は、自社の利益を支えている要因を、紙一枚に書き出すところにあります。

左側に「外部要因」、右側に「内部要因」と見出しをつけてください。

原油価格、為替、物価の動向は左側です。自社の努力では動かせません。

価格設定、原価管理、仕入れ先の分散は右側です。自社の努力で動かせます。

論点をひとつずつ紙に書き出すと、頭の中で漠然と渦巻いていた不安は、少しずつ具体的な形を持ち始めます。

この作業は、10分もあれば終わります。

右側に並んだ内部要因の中から、一つだけを選んで着手する段階に進みます。

たとえば価格転嫁を選んだ場合、着手すべきは値上げそれ自体ではありません。

価格に見合う価値を、取引先へどう説明するかという設計です。

中小企業庁「2025年版中小企業白書」には、興味深い分析があります。

費用構造に応じた価格設定ができている企業ほど、経常利益率が高い傾向にあるとされています。

ただし白書には、これは相関関係であり、因果関係を示す根拠ではないと注記しています。

値上げには顧客離れのリスクも伴うため、価格を上げれば利益が伸びるという、単純な話ではありません。

取引先へ何をどう説明するかを、まず言葉にしてみてください。

こうして選んだ論点は、自分一人の頭の中に留めず、共有する相手を決めておく必要があります。

顧問税理士に会う機会に、書き出した紙をそのまま見せてください。

そのうえで、「見落としていそうな論点はどれか」と尋ねてみてください。

他者の目で確認してもらうと、自分一人では気づけなかった見落としに気づきやすくなります。

不安を一人で抱え込む姿勢自体が、実はリスクを見えにくくしている場合があるのです。

黒字である点と、安心して過ごせる点は、本来まったく別の話です。

数字が良いからこそ、次に崩れかねない要因を、先回りして見ておく必要があります。

数字が良い時期ほど、次の変化に備える余力があります。

資金にも人にも余裕があるうちに論点を整理しておけば、いざ環境が変わったときの対応力は、大きく変わってきます。

今、自社の数字を支えている要因は何でしょうか。

その要因のうち、来期に崩れる可能性があるのはどれでしょうか。

問いを持ち続けるだけでは、不安は消えません。

一つの論点を選び、実際に取り組む姿勢こそが、来期を今より少し強くしてくれるはずです。

*来週から、一つの発信元(メルマガ登録のURL)に統合して投稿していきますが、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

経営戦略・組織変革・AI活用を、実務と心理の両面から支援しています。中小企業の経営者の方には、訪問またはオンラインで、ご相談をお受けしています(初回は無料)。

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