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ブログ / 事業家の羅針盤

第27話 事業を大きくできない人に共通する、任せ方の癖

2026年8月13日 執筆:渡邉ひとし

【社長が忙しいままの会社は、何を任せていないのか】作業と判断を分ける任せ方

求人を出しても、なかなか人が採れない。

そう感じている社長は、決して少なくないはずです。

ただ、仮に一人採用できたとしても、社長自身の忙しさは、実はあまり変わらないかもしれません。

むしろ、教える手間が増えて一時的に忙しさが増す、という声も聞きます。

人を増やしても社長が楽にならないのなら、原因は人数以外のところにある可能性があります。

先日、日本経済新聞が報じた帝国データバンクの調査を読んで、あらためてそう感じました。

「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」によると、正社員の不足を感じている企業は50.6%です。

4月としては4年連続で半数を超えています。

この数字を見ると、多くの社長が「人さえ増えれば楽になる」と考えるのも、無理はないと思います。

業種別では情報サービスなど7業種で6割を超えており、業種による差も大きいようです。

ただ、私はこの数字を、少し違う角度から読んでいます。

人手不足という言葉には、「人数が足りない」という意味だけが込められているわけではありません。

実際には、「今いる人材に判断まで渡しきれていない」という側面も含まれているはずです。

採用ができても、社長が抱え込む判断の量が変わらなければ、忙しさは解消されません。

具体的に見てみます。

社員に業務を渡しても、金額の最終判断や取引先への重要な返答は、社長のところで止まっている会社が少なくありません。

見積書の作成は任せているのに、最終の金額判断だけは社長が行う。

採用面接は現場に任せているのに、合否だけは社長が決める。

作業は渡していても、判断は渡していないままです。

これでは、社員が何人増えても、社長の判断待ちという構造は変わりません。

なぜ、この切り分けが起きるのでしょうか。

多くの社長は、判断を渡す基準を言語化していないからです。

感覚では分かっていても、言葉にしていません。

だから部下も、判断の練習ができません。

結果として、判断が発生する場面は、いつでも社長に戻ってきます。

会社の成長速度も、社長一人の処理能力に縛られてしまいます。

私はこれまで1,200件を超える経営相談を受けてきました。

時折、社長が一週間で使っている時間を書き出してもらう場面があります。

すると、多くの場合、経営の方向性を考える時間よりも、確認作業に使っている時間の方が長いという結果になります。

これは能力の問題ではなく、判断を渡す基準がないために、確認作業だけが積み上がっているだけだと、私は考えています。

両者を分けて書き出すだけで、社長自身が驚くほど判断を抱え込んでいる姿が見えてきます。

この関係を裏づけるデータを探したところ、リクルートマネジメントソリューションズの調査に行き当たりました。

管理職の時間の使い方を5タイプに分けています。

自分で作業をこなす時間が長い「プレイングマネジャータイプ」は、月200時間以上の長時間労働者の割合が43.1%です。

これは5タイプの中で最も高い数字です。

反対に、方針づくりに時間を配分する「方針重視タイプ」は、結果が異なります。

「部下に仕事を任せきれない」という悩みを抱える割合は、全体平均より10ポイント以上低くなっています。

この調査の対象は、従業員300名以上の企業に勤める課長級の管理職です。

中小企業の社長を対象にした調査ではありません。

規模も立場も異なるため、単純には当てはまりません。

ただし、作業に時間を使うか、判断に時間を使うかで、忙しさと任せられなさに差が出るという傾向は、参考になるはずです。

私自身、広告制作の現場で6万件を超える案件に関わってきました。

企画から実装まで、多くの現場を見てきましたが、任された側が育つかどうかは、渡された仕事の中身で大きく変わります。

作業だけを渡された人は、指示待ちのままになりがちです。

反対に、判断まで渡された人は、失敗も含めて経験を積み、次第に自分で考えるようになっていきます。

ではどうすればよいでしょうか。

まず、この一週間で自分が下した判断を書き出してみてください。

次に、その内、本当に自分でなければ決められない判断がいくつあるかを数えてみます。

おそらく半分以上は、基準さえ共有すれば部下に渡せる判断のはずです。

基準は、完璧な文章にする必要はありません。

「この金額までなら即決してよい」「この条件ならお断りしてよい」

この程度の、簡単な線引きで十分です。

もちろん、これは一朝一夕にできる話ではありません。

基準を言葉にする作業は、社長にとって意外と骨が折れます。

今まで感覚に頼ってきた判断を、他人にも分かる形に翻訳する必要があるからです。

渡した直後は、想定と違う結果になる場合もあるかもしれません。

それでも、この翻訳を一度でも済ませた会社は、社長の目の届かないところでも会社が回り始めます。

正社員の人手不足が4年連続で高水準にある今だからこそ、採用の数だけでなく、任せ方の基準を見直す価値があると思います。

会社をここまで大きくしてきた社長ほど、最初は自分が動くしかなかったはずです。

その頑張りがあったからこそ、今の会社があります。

だからこそ次の段階では、その頑張りを少しずつ人に譲っていきましょう。

焦らず一つずつ基準を言葉にしていけば、限られた人数のままでも、会社は社長のスピードを超えて動き出します。

3日間会社を離れても、現場が今日と同じ速さで動く姿を、一緒に目指していきましょう。

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

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