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ブログ / 事業家の羅針盤

第39話 復活した永谷園「モコモコ」は、3週間で休売した。想定を超えて売れたときに、信頼を守る判断軸とは。

2026年11月5日 執筆:渡邉ひとし

新規事業で売れなかったときの備えはしても、売れすぎたときの備えを決めていない会社があります。

しかし、想定を超えて売れたときに供給が追いつかなければ、販売は止まります。

そして、止まる期間が長いほど、顧客の信頼は少しずつ薄れていきます。

そのため、新規事業の準備では、売れた後の判断基準を、先に決めておく必要があります。

2026年11月2日、永谷園は「マグカップでふっくらケーキ!モコモコ バニラ」の販売再開を発表しました。

再開日は11月24日(火)で、バニラのみを数量限定で全国販売します。

チョコは、引き続き休売です。

モコモコは、2000年に発売され、2014年に終売した商品です。

食品産業新聞社によると、終売後の10年間で、再販を求める声が500件以上寄せられました。

2026年7月24日の時点で、復活を告知した永谷園公式Xの投稿は、7.7万いいねを集めていました。

そして、12年ぶりに8月3日に発売されましたが、8月24日に、発売から3週間で一時休売を発表しました。

公式リリースによると、当初の販売計画を大幅に上回り、安定的な商品供給が困難になったためです。

休売の期間は、8月下旬から11月24日までの、約3か月です。

再開は、「数量限定ですがお届けする目途が立ちました」ためだと、永谷園は説明しています。

あわせて、お客様に多大なご迷惑をおかけした点へのお詫びも、明記しています。

ここで考えたいのは、新規事業を始めるときの想定と準備です。

新規事業の準備は、事業の種類によって大きく変わります。

今回のような商品販売では、需要予測が一つの鍵になります。

需要を予測するには、マーケティングリサーチが欠かせません。

そのうえで、リサーチの結果と自社の生産能力を照らし合わせ、発売の方法とタイミングを考えます。

これが、オーソドックスな進め方だと、私は考えています。

しかし、過去のデータをいくら見ても、需要を的確に予測するのは簡単ではありません。

そのため、予測が外れても対応できる、販売戦略が必要になります。

販売戦略は、販売だけが一人歩きしても意味がありません。

自社や協力会社の生産能力、供給のタイミング、必要な日数まで含めて、はじめて成り立ちます。

ここから、売れた後の判断の物差しを、3つに整理します。

1つ目は、生産能力から逆算して、発売の方法を決めているかどうかです。

2つ目は、撤退の基準を、始める前に決めているかどうかです。

新規事業で多いのは、撤退の基準を決めていないケースだと、私は見ています。

今回のニュースに、撤退の話はありません。

しかし、新商品を売り出すときは、どの水準で撤退するのかを、想定して決めておく必要があります。

3つ目は、想定以上に売れたとき、数量を限定する用意があるかどうかです。

供給を続けた末に、数か月の休売に至れば、顧客の信頼は薄れる懸念があります。

そのため私は、販売数が急に伸びたら、急遽、数量を限定する方法があると考えています。

その際は、「数量を限定させていただきます」と、理由を含めて事実のとおりに公表する広報が欠かせません。

私は前職で、電通グループの広報PR(パブリックリレーションズ)を主な業務とする会社の方々と、複数の企業の広報に関わる仕事に従事しました。

その経験から、数量を限定する理由は、飾らずに事実のとおり伝えるのが基本だと考えています。

永谷園は、休売の理由を「当初の販売計画を大幅に上回り」と書き、お詫びも添えています。

この誠実な公表は、評価できる対応です。

一方で、公表された範囲では、休売の前に、数量を限定する選択肢を検討したのかは分かりません。

日本経済新聞は、原料調達や生産が追いつかなかったと伝えています。

永谷園の内部事情は外から見えず、「休売」の判断が誤りだったとは言えません。

それでも、発売前の7月24日に、復活の告知は大きな反響を集めていました。

SNSの反響が販売数に直結するとは限りません。

しかし、需要が想定を超える可能性を示す材料の一つだったと、私は見ています。

機会損失という損得は、もちろんあります。

しかし、私が優先したいのは、顧客との信頼関係を損なわない点です。

信頼を維持し、できれば、さらに深めるところまで含めて考えておく必要があります。

売れた数字は一時的でも、信頼は次の新商品を受け入れてもらえるかを左右すると、私は考えています。

もちろん、すべての会社が、数量を限定できるわけではありません。

協力会社の生産能力や資金に余力がなければ、受注を絞る判断は簡単ではありません。

それでも、売れたときの数量の決め方と公表する際の文書は、発売前に決められます。

新しい商品やサービスを世に出す経営者の方は、期待と不安の中で準備を進めていると思います。

売れる未来を信じて踏み出す挑戦を、私は応援しています。

あなたの会社の新規事業が、想定以上に売れたとき、顧客の信頼を守るために、何を決めておきますか。

【出典】永谷園「「マグカップでふっくらケーキ!モコモコ バニラ」販売再開のお知らせ」(2026-11-02)、食品産業新聞社ニュースWEB「永谷園「モコモコ」発売3週間で一時休売 12年ぶり復活の「マグカップでふっくらケーキ」、予想上回る注文で供給困難に」(2026-08-24)、食品産業新聞社ニュースWEB「【Xで7.7万いいねの大反響】12年ぶり「マグカップでふっくらケーキ!モコモコ」復活 平成の人気スイーツを令和向けにリニューアル【永谷園】」(2026-07-24)、日本経済新聞「永谷園、カップケーキ「モコモコ」を一時休売 生産追いつかず」(2026-08-24)

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

経営戦略・組織変革・AI活用を、実務と心理の両面から支援しています。中小企業の経営者の方には、訪問またはオンラインで、ご相談をお受けしています(初回は無料)。

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