経営計画を立て、頑なに守ろうとする社長ほど、数字とのズレに追い詰められています。
期初に決めた目標値に届かない月が続くと、焦りから戦略自体を疑い始めます。
逆に、目標値を大幅に超えてくると、今度は浮かれて、当初の戦術を急に手放してしまう場面もあります。
フジクラは2026年8月7日、営業利益予想を期初の210億円から432億円へと、わずか3カ月で2倍以上に上方修正しました。
背景にあるのは、AIデータセンター需要の急増です。
同社は光ケーブルなどのインフラ製品を供給しており、想定を大きく超える受注が続いたと報じられています。
期初に立てた計画からこれほど数字が動けば、判断に迷う場面が出てきます。
当初の戦略や戦術をそのまま守るべきか、それとも大きく作り替えるべきか、という迷いです。
これは急成長した大企業だけの話ではありません。
中小企業の現場でも、同じ迷いは日常的に起きています。
数字が動くたびに一喜一憂していては、経営者自身の判断軸がぶれてしまいます。
かといって、変化を無視して当初の計画に固執すれば、目の前の商機を逃しかねません。
現場の実態と離れた計画を、社員に押し付けてしまう恐れもあります。
私自身、経営者として、また顧問先の経営計画づくりに関わる中で、この迷いに何度も向き合ってきました。
経営計画は、目標として日々の行動の軸になります。
ただ、外部環境の変化や、日々出会う見込み客との関係性から、計画には無かった仕事や業務が生まれる場合があります。
逆に、見込んでいた仕事や業務が失われる場合もあります。
そのため、目標値に届かない月もあれば、大幅に超えてくる月もあるのが現実です。
このとき、あくまでも期初に決めた戦略・戦術を守るべきか、それとも変えるべきか、顧問先の会社でも迷いました。
結論を出すために、社内で真剣に議論しました。
議論の軸に置いたのは、目の前の数字ではなく、会社が目指すゴールや数年先の目標である、ミッションやビジョンです。
そこに照らし合わせた結果、期初の戦略や戦術は尊重しながら、場面に応じて微修正や変更を加えていく考えで一致しました。
議論では、当初想定していなかった仕事の依頼を、どこまで引き受けるかを話し合いました。
逆に、見込んでいた案件が流れたとき、他の柱をどれだけ急いで育てるべきかという論点も突き合わせました。
もちろん、すべての会社が同じ結論にたどり着くとは限りません。
業種や規模、置かれている市場によって、守るべき優先順位は変わってきます。
数字を守るのが目的になると、外部環境が変わった瞬間に、計画自体が会社の足かせになってしまいます。
かといって、数字が動くたびに戦略をゼロから作り直していては、社員も顧客も、会社がどこを目指しているのか分からなくなります。
経営計画を数字だけで管理していると、別のリスクも抱えます。
目標を超えた瞬間に社員の気が緩み、逆に未達が続くと現場が委縮して挑戦しなくなるリスクです。
大事なのは、戦略や戦術を固定する判断ではありません。
ミッションやビジョンという軸をぶらさずに、そこへ向かう道筋を柔軟に描き直し続ける判断です。
もちろん、何でも柔軟に変えてよいわけではありません。
目先の受注や数字に振り回されて、ミッションやビジョンまで揺らいでしまっては、経営計画を立てた意味がなくなります。
守るべきは数字ではなく、会社が本来目指す方向であり、そこから逆算して、戦略・戦術の微修正を重ねていく姿勢こそが問われています。
社会の変化や顧客のニーズの変化に合わせ、臨機応変に対応する姿勢こそが、持続型黒字経営の本質だと、私は考えています。
「行き詰まったのは、現在の方法であって、未来の可能性ではない。」
私が顧問先とともに実践している『持続型黒字経営3ステップ構築法』の考え方でも、最初に定めるのは数字ではなく、会社が本来目指す『ブレない軸』です。
数字は、その軸に向かっているかどうかを測るための物差しにすぎません。
経営計画は、一度作ったら終わりではありません。
外部環境が動くたびに、ミッションやビジョンに照らして問い直す前提で設計しておく姿勢が、これからの経営には欠かせないと感じています。
あなたの会社は、目標値とのズレが出たとき、数字自体を守ろうとしていませんか。
それとも、ミッションやビジョンに立ち返って、計画を見直せていますか。
【出典】東洋経済オンライン「なぜフジクラはわずか3カ月で利益予想を2倍以上に修正したのか…背景にあるAIデータセンターブーム『3つの変化』」


