売上100億円を目指すと掲げたのに、翌期の計画は今年の実績に数%を上乗せしただけになっていませんか。
大きな目標を宣言する中小企業は、ここ数年で確実に増えています。
しかし、その多くは、ゴールがイメージにとどまったまま、現状の延長線上で計画を立てています。
中小企業基盤整備機構は2026年3月26日、「100億宣言」を公表した企業が3,050件に達したと発表しました。
100億宣言は、売上高100億円を目指す中小企業が、自ら目標を掲げて公表する国の取り組みです。
宣言には、成長目標と期間、実現までの課題、具体的な取り組み、実施体制を盛り込みます。
さらに、経営者自らのメッセージも求められます。
つまり、国の制度の場合でも、目標の数字だけでなく、そこへ至る道筋と体制を言葉にするよう求めているわけです。
3,000社を超える会社が、高い目標に向けて動き出している流れは、心強く感じます。
一方で、宣言という形を取るかどうかにかかわらず、目標を掲げた会社がそこへ向かえているとは限りません。
私が、よく聞く落とし穴があります。
ゴールを掲げても、その姿がイメージ的なまま終わってしまう落とし穴です。
結果として、計画は現状の問題点や課題点を抱えたまま、今年の実績に少しずつ上乗せしていく積み上げ型になります。
積み上げ型の計画は、現場にとって分かりやすく、立てやすい計画です。
しかし、今の延長線上では届かない目標に、積み上げで近づこうとしても、途中で息切れしやすくなります。
目標と計画のあいだに埋まらない差が生まれ、やがてゴール自体が掛け声だけの旗印になってしまいます。
先日、顧問先の会社でConsultingを行いました。
経営層が集まり、100億円企業を目指す経営戦略会議を開いた日です。
この会社は、年初に社内で100億円企業を目指すと宣言しました。
さらに、金融機関も参加した経営計画の発表会でも発表しています。
今回の会議では、ゴールの全体構想と、そこへ到達するまでのロードマップが議論されました。
そのうえで、新会社設立を視野に入れた戦略が、経営陣のあいだで共有されました。
さらに、複数の会社設立を実現するための2つのキーワードが示されました。
私が注目したのは、ゴールの側から次の一手を言葉にしようとする進め方です。
これが、ゴールから逆算するバックキャスティングの王道だと、私は考えています。
まず到達点の姿を描き、次に節目ごとの姿を置き、最後に今期やるべき手を決めるという順番です。
積み上げ型の計画が、今の会社にできる範囲から始まるのに対して、逆算型はゴールに到達した会社の姿から始まります。
逆算型で考えると、今期の優先順位も変わります。
積み上げ型では、今ある課題を一つずつ潰していく作業が、計画の中心になります。
逆算型では、ゴールに近づくために、今期どの課題を解き、どの課題をあえて後回しにするかを選びます。
限られた人と資金をどこに置くかという判断が、ゴールの姿から決まるわけです。
逆に、ゴールと関係の薄い課題にまで手を広げると、社員の力が分散し、本当に動かすべき一手が遅れてしまいます。
計画に並ぶ数字は同じでも、その数字を生み出す打ち手の中身が変わってきます。
もちろん、すべての会社に100億円という目標が必要なわけではありません。
業種や市場の大きさ、経営者が目指す会社の姿によって、描くべきゴールは変わります。
また、逆算して描いた道筋にも、現状の問題点や課題点は残ります。
違いは、課題を抱えたまま積み上げるのか、ゴールに照らして解くべき課題を選び直すのか、という点にあります。
ただし、逆算型であっても、ロードマップを経営陣が共有していなければ、現場は目の前の数字を追うだけになります。
社長の頭の中にだけある逆算は、社員から見れば、これまでの積み上げ計画と何も変わりません。
特に新会社を立ち上げた直後は、既存事業の現場ほど、なぜ今それに取り組むのかが見えにくくなります。
だからこそ、経営陣が同じ場で全体構想とロードマップを確かめ合う時間には、大きな意味があります。
大きな目標を掲げた社長の決断には、それだけで価値があります。
その決断を実現につなげるために、一度、ゴールから自社の計画を眺め直してみてください。
あなたの会社の計画は、ゴールから逆算して描かれていますか。
それとも、今年の実績に上乗せした積み上げ計画になっていませんか。
【出典】中小企業基盤整備機構「『100億宣言』企業の公表件数が3,000件を突破しました」(2026年3月26日)、中小企業基盤整備機構「100億企業成長ポータル」


