経営計画を発表した日で、経営者の仕事は終わったと考えていませんか。
計画書は、作った時点の経済や社会を前提にしています。
しかし、その前提は、発表した翌日から少しずつ動き始めます。
日本銀行は2026年10月1日、9月の全国企業短期経済観測調査(短観)を公表しました。
この調査には、企業が借入金利の水準をどう感じているかを尋ねる項目があります。
中小企業(全産業)で、「上昇」と答えた企業の割合から「低下」と答えた企業の割合を引いた値は、70ポイントでした。
6月の調査では61ポイントでしたので、3か月で9ポイント上昇しました。
さらに、先行きの見通しは74ポイントで、この先も金利負担が重くなると見る企業が増えています。
同じ調査で、中小企業(全産業)の2026年度の設備投資計画は、前年度比4.7%減でした。
ただし、この数字は6月の調査から4.0ポイント上方修正されています。
つまり、期の途中でも、企業は環境の変化に合わせて計画を見直しているわけです。
一方で、年度初めに作った経営計画を、そのまま放置している会社も少なくありません。
私は、経営計画書を発表した後に経営者や部署の責任者が必ず実行すべき仕事は、毎月のPDCAの検証だと考えています。
理由は、経済や社会が刻一刻と変化しているからです。
異常気象も、業界の変動も、絶え間なく動いています。
だとすれば、計画も、その変化に合わせて修正する必要があります。
そのためには、変化を早く察知しなくてはなりません。
日頃から、経済の動きや社会の流れを見ておく必要があります。
気候変動による災害や、法改正のように業界を揺るがす変化も、同じように追いかけます。
つまり、正しい情報を常に入手し、自社に引き寄せて分析する習慣が欠かせません。
情報源は、日銀短観のような公的な統計、業界団体の発表、取引金融機関や取引先の声などを組み合わせると、偏りを減らせます。
この考え方は、ビジネスモデルにも当てはまります。
一度つくった儲かる仕組みが、永遠に続くはずはありません。
経済や社会が変わると、ビジネスモデルを構築した時点の条件と、今の条件が食い違ってくるからです。
条件が食い違ったまま同じ仕組みを回し続ければ、利益は少しずつ削られていきます。
そのため、経営計画だけでなく、ビジネスモデルも世の中の変化に合わせて見直す必要があります。
ここで、一つ質問です。
あなたの会社は、年に一度、SWOT分析を実施していますか。
SWOT分析を実施している会社は、世の中の変化に対する意識が高いはずです。
そうした会社であれば、毎月のPDCAも欠かさず実行していると思います。
逆に、SWOT分析をしていない会社は、毎月の会議が数字の確認だけで終わっていないか、点検してみてください。
計画と実績の差だけを見ても、差が生まれた原因が会社の内側にあるのか、外側の変化にあるのかは分かりません。
外側の変化に気づかないまま現場を叱咤しても、計画は回復しません。
原因を取り違えたまま打ち手を重ねても、現場の負担だけが増えていきます。
また、部署の責任者が自部署の数字しか見ていなければ、会社全体の前提の変化は共有されません。
そのため、毎月の会議は、数字の報告会ではなく、前提を点検して修正を決める場にする必要があります。
そうしないと、年度末になって初めて計画の無理が表面化し、修正の機会を逃してしまいます。
もちろん、すべての会社が、短観の数字どおりに動くわけではありません。
業種や地域、取引先によって、金利や市場の影響の受け方は変わります。
大切なのは、世の中の数字を、自社の計画の前提と照らし合わせる習慣です。
毎月の会議で、最低でも三つの点を確かめてみてください。
一つ目は、計画を立てた時点の前提が、今も成り立っているかどうかです。
二つ目は、前提が変わったなら、どの数字と打ち手を修正するかです。
三つ目は、修正した内容を、責任者全員が同じ理解で動けるかどうかです。
計画を立てるまでに、経営者や幹部社員は多くの時間と労力をかけています。
その時間と労力は、計画を実行して成果を出すためにかけたはずです。
だからこそ、発表後の見直しまで含めて、計画づくりの仕事だと考えています。
その努力を、絵に描いた餅にしないために、毎月の検証と修正を続けていきましょう。
あなたの会社の経営計画は、発表した日の前提のままになっていませんか。
それとも、毎月の検証で、世の中の変化に合わせて磨き直されていますか。
【出典】日本銀行「短観(要旨)(2026年9月)」「短観(概要)2026年9月 第210回 全国企業短期経済観測調査」(2026年10月1日)


