シニアを人手不足の穴埋めとして迎えるだけの会社は、その人が持つ経験という資産を活かし切れません。
一方で、ミドルシニア世代の側も、自分の経験が誰かの力になる場面を、言葉にできているでしょうか。
マイナビは2026年7月8日、「シニアバイトの採用に関する企業調査(2026年版)」を発表しました。
調査は、アルバイトの採用に携わった20〜60代の1,483名を対象に、2026年5月に実施されています。
65歳以上のシニアバイトを雇用している企業は61.0%で、前年の57.9%から3.1ポイント増えました。
今後採用したい企業も、56.4%あります。
ただし、採用したい理由で最も多いのは「人手不足の解消・改善に繋がるから」で、45.6%です。
採用したい企業がシニアに期待する役割として、「職場に特有の専門知識・専門スキル」を挙げたのは32.2%でした。
また、役職や責任のあるポジションを付与する施策を実施している企業は、32.8%にとどまります。
つまり、シニアの雇用は広がっていますが、経験を活かす役割を任せる企業は、約3分の1です。
なお、この調査はアルバイトの採用が対象で、正社員や役員の登用は含みません。
回答者は採用担当者であり、シニア本人の評価でもありません。
そのため、すべての職場に当てはまるわけではありませんが、傾向として押さえておく価値はあります。
私は、この数字の背景に、シニアのイメージの問題があると見ています。
20代、30代、40代の方が描くシニア像は、いまも漠然としているのではないかと思います。
私自身も、その年代の頃に描いたシニア像は、漠然としていました。
アクティブシニアという言葉が広がってから、かなりの年数が経ちました。
その間に、シニアのイメージは大きく変わっています。
ミュージシャンや俳優、スポーツ選手など、シニアの世代に入っても、多くの現役で活躍している方々がいます。
テレビ番組での街頭インタビューを見ていても、見た目からは、シニアと呼べない方々が増えてきた印象です。
昭和の時代の、シニア像とは様変わりしています。
しかし、イメージが更新されないままだと、シニアの役割も、昔のイメージのまま決まってしまう可能性があります。
先日、あるコミュニティで、20代前半の女性とミーティングをしました。
非常に能力の高い人という印象です。
その方が、「実はメンターが欲しいと思っています」と打ち明けてくれました。
私には意外でした。
Z世代を含む若い世代の優秀さは、日頃から感じているからです。
メンターとは、古くは師匠と呼んでいた存在です。
つまり、一定の年数を経た方が担う役割です。
考えてみると、私にも人生の師匠が2人います。
お二人に出会っていなければ、いまの自分は無いと断言できます。
20代、30代で出会った2人から、生きていくうえでの術(すべ)や考え方、人生哲学、仕事に向かう姿勢を教わりました。
日々学ぶ必要性や、仲間と連携して大きな仕事を成し遂げる実体験も、教わりました。
講義ではなく、スポーツや仕事、お酒の席で、体験を通して教わりました。
日々の薫陶だったため、教えは身についていました。
それを裏付けたのは、会社を辞めて独立し、ゼロから仕事を始めたときです。
師匠の言葉や考え方、取り組む姿勢が、あらゆる場面で浮かんできました。
その言葉を自分なりに理解し、体現してきた結果、いまの自分が成り立っています。
私のレベルはまだ低く、2人には申し訳ない気持ちは本心です。
それでも、出会っていなかった自分と比べれば、雲泥の差があると断言できます。
シニアの方々は、こうしたあらゆる体験と知見を持っています。
その経験を、単純な作業や肉体労働だけに充てる現状に、私は疑問を持っています。
もっと活かせる場面、もっと活躍できる場面が、多くあると感じています。
たとえば、ホスピタリティの精神は、多くの経験を経た人の中から自然に湧き上がるのではないでしょうか。
女性の活躍の場が広がったように、シニアの活躍の場も広げる必要があると感じています。
それは、労働人口が減っているという背景だけで言っているのではありません。
私が出会ってきたシニアの方々が、人のため、企業のため、社会のために役立つ能力を、十分に持っていたからです。
ただし、経験があるだけでは、役割は生まれません。
調査では、シニアの課題として「デジタルツールや新たな業務への対応に時間がかかる」が29.3%ありました。
師匠が教えてくれた「日々学ぶ必要性」は、シニアになっても変わりません。
また、身につけた考え方を、若い世代が使える言葉にする努力も、シニア側に必要です。
経営者の方は、シニアを迎えるときに、人手の数ではなく、経験を活かす役割を決めてください。
たとえば、若手の相談役のような役割から、試してみてください。
ミドルシニア世代の方は、自分が身につけた考え方を、誰に渡せるのかを考えてみてください。
あなたの経験は、いま、誰の力になれるでしょうか。
その経験、地域の企業を支える力になるかもしれません。
次の世代の力になろうとするあなたを、応援しています。
【出典】マイナビ「シニアバイトの採用に関する企業調査(2026年版)」(2026年7月8日公表)


