【組織変革が3ヶ月で元に戻る理由】400社を見てきたプロが指摘する、会議の空気
先日、ダイヤモンド・オンラインの連載記事を読んで、正直、耳が痛くなりました。
筆者の沢渡あまね氏は、400以上の企業や自治体、官公庁の変革支援に関わってきた専門家です。
記事では、会議や社内講演で質疑応答の時間になっても、誰も手を挙げない会社を「文化度が低いレガシーな組織」と評していました。
手が挙がらない理由として、恥ずかしさや悪目立ちへの不安に加え、過去に怒られた経験が挙げられています。
これは、あなたの会社の会議でも、思い当たる空気ではないでしょうか。
制度をどれだけ整えても、この空気が変わらなければ、変革は続きません。
多くの会社は、研修や評価制度など、目に見える仕組みから変革に着手します。
この順番自体は、間違っていません。
問題は、目に見える仕組みを変えただけで、経営者が満足してしまう点にあります。
本当に変えるべきは、社員が無意識に従っている「当たり前」のほうです。
同じ連載では、会議室に社員だけが集まり、一台の端末でリモート参加者とつなぐ会議のやり方も、組織の古さを表すと指摘されていました。
その場にいる人だけで話が進み、同じ考え方の人同士で意思決定が固まりやすくなるからです。
逆に、全員が個別の端末からオンラインで参加すれば、見える景色も情報も揃い、温度差が生まれにくいとも述べられていました。
どちらの指摘にも共通するのは、ルールではなく、日々の振る舞いに体質が表れるという視点です。
思い当たる場面が、あなたの会社にもないでしょうか。
新しい評価制度を入れたのに、実際の評価は相変わらず年功や声の大きさで決まる。
心理的安全性を掲げたのに、若手が意見を言うと、会議の空気が固まる。
表向きの制度と、実際に社内で働いている力学が、まったく別々に動いているのです。
これでは社員は、「結局、何も変わっていない」と感じるだけになります。
そして、次に新しい取り組みを打ち出しても、白けた目で見るようになっていきます。
「うちの社員は変化を嫌う」と、社員の姿勢のせいにしたくなる瞬間もあるはずです。
しかし、社員が変わらないのではなく、発言や挑戦を許す空気が変わっていないだけの場合がほとんどです。
社員は、経営者の言葉ではなく、実際に評価され、「生き残っている行動」をよく見ています。
経営者がどれほど危機感や理想を語っても、その言葉は現場にそのままの熱量で届きません。
届く前に、日々の会議や評価の場面で働く「別の力学」に、上書きされてしまうからです。
私は、広告とマーケティングの現場で、6万件を超える案件に関わってきました。
その経験から言えるのは、人は言葉ではなく、目にした光景で動くという事実です。
どれほど立派な言葉を掲げても、会議や評価の場面で「違う力学」が働いていれば、社員はそちらを信じます。
つまり、変革を一過性で終わらせないためには、制度と現場の力学を、同じ方向に揃える必要があります。
これは、経営者の熱意や本気度の問題ではありません。
純粋に、「実行の設計」の問題です。
では、あなたの会社では、具体的に何から手をつければいいのでしょうか。
まず、日々の会議の中で、実際に評価されている行動を洗い出してみてください。
掲げている理念と、実際に評価されている行動が、食い違っていないかを確認する作業です。
次に、その食い違いを、経営者自身の言葉で、社員に率直に認める場を持ってください。
体裁を取り繕うより、ズレを認めるほうが、結果として信頼につながります。
さらに、会議で最初に発言するのは、経営者自身だと心がけてください。
話す順番にも工夫の余地があります。
まず参加者への感謝を一言添え、次に自分の率直な所感を述べ、最後に身近な事例に触れる順で話してみてください。
いきなり難しい論点から入ると、後に続く人はかえって発言しにくくなります。
簡単な感想や所感から始めるだけでも、次の人が発言しやすい空気が生まれます。
これは特別な技術ではなく、誰でも今日から始められる小さな習慣です。
最後に、小さな行動の変化を、その場で具体的に取り上げて評価し続けてください。
継続とは、大きな号令ではなく、こうした小さな積み重ねの結果です。
私は普段、ホワイトボードを使いながら、経営者の頭の中にある論点を可視化する対話をしています。
制度の話と、現場で実際に起きている力学の話を、あえて同じホワイトボードに並べて整理するのです。
すると、経営者自身、これまで見えていなかった矛盾に、自分の言葉で気づき始めます。
気づいた矛盾は、外部から指摘されるより、はるかに強く行動を変える力を持っています。
多くの経営者は、制度を変えれば、組織は変わると考えています。
しかし、制度は変革の入口にすぎません。
本当の勝負は、日々の会議や会話に染みついた「当たり前」を変えられるかどうかです。
ここに手をつけないまま進める変革は、正直、労力に見合うほどの成果を生みません。
自社の会議の空気を疑う視点さえ持てれば、変革はまだ十分にやり直せます。
社員を変えようとする前に、まず自社の力学を、自身の目で静かに見つめ直してみてください。
そこから、本当に続く変革が必ず始まります。
これからも現場に寄り添い、支援していきます。


