採用で即戦力のスキルを最優先にしている会社ほど、数年後の組織づくりで苦労します。
人手不足の中で、空いた席を埋めるために、採用を急いでいないでしょうか。
パーソル総合研究所が2026年7月に、「人事部トレンド定量調査2026」を発表しました。
対象は、従業員300名以上の企業に勤める、係長以上の人事・経営企画・経営層の2,000名です。
実施時期は、2026年3月となっています。
経営課題の1位は「人材確保・採用競争への対応」で、53.9%でした。
2位は人材育成・リスキリングの45.3%、3位はDX・AI活用の38.2%です。
人事課題では、エンゲージメント向上が36.0%、定着・離職防止が35.6%でした。
採用した人が定着せず、活躍もしないという悩みが、上位に並んでいます。
採用は入口にすぎず、入社後の活躍と定着まで含めて、初めて成果になります。
また、人事部が経営戦略に関与して成果を出している企業ほど、売上高と利益率が増えた企業の割合が大きいと報告されています。
ただし、これは従業員300名以上の企業を対象にした調査です。
対象企業より規模が小さい会社に、そのまま当てはまるとは限りません。
また、両者の関係が見られるだけで、原因と結果までは断定できません。
それでも、採用を人事担当者だけに任せず、経営の課題として扱う姿勢が問われている点は、私たち中小企業にも共通すると考えます。
私は採用の相談を受けるとき、社長に必ずお願いしている条件があります。
人柄、性格、人間性を、最も重要な基準にしてください、というお願いです。
スキルや能力を最優先にする社長は、意外に多いからです。
しかし、これは採用の大きな間違いだと、私は考えています。
スキルや能力は、入社後に磨けるからです。
一方で、人柄や性格、人間性は、他人が教育して変えようとしても、変わりません。
他人と過去は、変えられません。
自分と未来は、変えられます。人は、自分で意識したときにだけ、変われます。
稲盛和夫氏には、人生や仕事の結果を表す考え方があります。
「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」という方程式です。
考え方はマイナス100からプラス100、熱意と能力は0からプラス100の幅で考えます。
熱意と能力が高い人でも、考え方がマイナスであれば、結果もマイナスになります。
つまり、優秀な人ほど、会社を衰退へ導く存在になり得ます。
しかも、その影響は本人だけでなく、周囲の社員の士気にも及びます。
私はこの考え方に、100%共感しています。
もう一つ、警鐘を鳴らしたい点があります。
従来の新卒一括採用の時代と同じ判断軸を、持ち続けている経営者が多い点です。
まず採用して、入社後に配置を決める手法です。
令和の時代に、Z世代の人材に対して、この手法は有効とは言えません。
では、どうすればよいのでしょうか。
第一に、自社のミッションとバリューを語り、共感してくれる人材を選びます。
第二に、数年後の自社の未来設計図を描き、そこに必要な人材を求めます。
どんな人材と一緒に、自社の未来を築くのか。
そこが曖昧なまま採用するのは、ギャンブルと同じです。
事業に投資する経営者が、人材採用だけを運任せにする理由はありません。
採用は、経営トップが本気で取り組むべき業務です。
採用した人が、将来の社長になる可能性もあるからです。
私自身、採用には長く関わってきました。
大学では数年間、キャリアファシリテーターとして、就職活動の指導を担当しました。
その後、2つの大学で「キャリアデザイン(人生設計)」の授業を受け持ち、延べ10年間、教壇に立ちました。
前職の会社では、若い頃から約30年間、自社の採用担当を務めました。
この経験が、『採用』について考える土台になっています。
採用は、ときに自社の商品やサービスよりも重要だと考えています。
商品もサービスも、人が生み出すからです。
もちろん、業種や職種によっては、資格や技能が欠かせない役割もあります。
その場合も、人柄や考え方を確かめる工程は、省かないでください。
「企業は人なり」と言いながら、採用の場では、履歴書のスキル欄だけを見ていないでしょうか。
迷いながら採用に向き合う経営者を、私は心から応援しています。
あなたの会社では、次の1人を選ぶ基準の中に、人柄や考え方を確かめる工程が入っていますか。
そして、その人と数年後にどんな会社を築くのか、言葉にできていますか。
【出典】パーソル総合研究所「人事部トレンド定量調査2026」、稲盛和夫『生き方―人間として一番大切なこと』(サンマーク出版、2004年)


