未来デザインカンパニー ロゴ未来デザインカンパニー持続型経営コンサルティング
ブログ / シン組織変革の教科書

第57話 職場の3人に1人が、信頼の揺らぎを経験している。組織変革を支える信頼は、一度の話では築けない。

2026年9月25日 執筆:渡邉ひとし

社長が方針を語っても、社員の心が離れていれば、組織変革は前に進みません。

しかも、その心の離れは、多くの場合、社長の目に見えないところで起きています。

会議では誰も反対せずにうなずいてくれるのに、なぜか現場が動かない。

そんな悩みを抱える経営者は、少なくないはずです。

パーソル総合研究所が2026年9月、職場の信頼に関する研究結果を発表しました。

リーダー層1,775名、メンバー層1,636名を対象にした調査です。

過去3カ月以内に、相手への信頼が揺らぐ出来事を経験した人は、リーダーの33.3%でした。

メンバーでは34.7%と、ほぼ同じ割合になっています。

職場のおよそ3人に1人が、直近の3カ月で信頼の揺らぎを経験している計算です。

研究では、信頼の揺らぎは特別な出来事ではなく、多くの職場で日常的に生じていると指摘しています。

注目したいのは、信頼が揺らいだときの反応の違いです。

上司は、声を上げたり、関係を話し合い直したりと、立て直しに動く傾向があります。

一方で部下は、距離を置く、黙るといった、回避的な反応を取りやすいとされています。

つまり、部下の信頼が揺らいでも表面には出にくく、上司が気づかない恐れがあります。

さらに、上司が修復のために動いても、それを部下が認識している割合は約3割にとどまります。

研究は、信頼の修復は一度の謝罪では完結せず、段階的に進むとしています。

原因や経緯の説明による「理解」、行動の変化による「納得」の順に進みます。

その先に、一貫した対応による「安心」、継続的な関与による「再期待」が続きます。

この結果を読んで、私はある顧問先の社長を思い浮かべました。

その社長は最近、会社の未来構想を明確な言葉で描きました。

そして、ビジョンとバリュー(行動指針)を社長メッセージにまとめ、社員全員に送信しました。

私もその文章を、一気に3回読み直しました。

未来に向けた考え方が、社長自身の言葉で、はっきりと示されていたからです。

組織変革で重要なのは、社長が明確な言葉で、未来に向けた考え方を示す姿勢だと考えています。

方向が曖昧なままでは、社員は何を信じて動けばよいのか判断できません。

先の研究では、相手が「わざと行った」と受け止めたときほど、信頼の低下が大きいとも示されています。

逆に、原因が、課題の難しさにあると受け止めた場合は、低下が相対的に小さくなります。

社長の意図が言葉で伝わっていないと、社員は同じ出来事でも、悪い方向に解釈しやすくなります。

未来に向けた考え方を、明確な言葉にする意味は、ここにもあると考えています。

その後、幹部社員から中間管理職、新入社員まで、社員のモチベーションが高まっていきました。

自ら考え、提案し、行動する、自走型の社員へと変わりはじめています。

ただし、この変化は、メッセージを一度送っただけで起きたのではありません。

この会社では、朝礼に加えて、その後の朝のミーティングを欠かさず続けています。

ミーティングでは、コミュニケーションのズレや、目指す方向性について話し合っています。

こうした対話の積み重ねが、経営層と社員との信用・信頼に結びついていると感じています。

研究が示す「一貫した対応」や「継続的な関与」を、日々の運用で実践している形とも言えます。

ここに、経営者にとって耳の痛い現実があります。

多くの会社では、社長が一度方針を語れば、社員に伝わったと考えがちです。

しかし、一気に、短時間に、一回話した程度では、信頼は築かれません。

むしろ、部下が黙ってうなずいている間に、信頼は揺らいでいるかもしれません。

反対意見が出ない様子を、納得の表れと読み違えると、変革は形だけで終わります。

明確な言葉と、何度も重ねる対話は、どちらか一方だけでは足りません。

言葉だけでは、社員は社長が本気かどうかを見極めようと、様子をうかがいます。

対話だけでは、話し合いの行き先が定まらず、議論が堂々巡りになります。

もちろん、すべての会社で毎朝のミーティングが最適とは限りません。

業種や勤務形態によって、対話の頻度や場の持ち方は変わります。

大切なのは形式ではなく、ズレを確かめ合う機会を途切れさせない運用です。

信頼は、特別な出来事で一気に築かれるのではなく、日々の対話で少しずつ積み上がります。

社長が未来を語り、その言葉を社員と何度も確かめ合う姿勢が、変革を支える土台になります。

焦らず、諦めずに対話を重ねる経営者を、私は心から応援しています。

あなたの会社では、社長の言葉は、社員にどのように届いているでしょうか。

そして、そのズレを確かめ合う対話の場は、日常の中に用意されていますか。

【出典】パーソル総合研究所「信頼の揺らぎと修復のメカニズムに関する研究」

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

経営戦略・組織変革・AI活用を、実務と心理の両面から支援しています。中小企業の経営者の方には、訪問またはオンラインで、ご相談をお受けしています(初回は無料)。

✉ ひとことで相談する 私たちについて

無料メルマガ|平日毎日

渡邉ひとしのBusiness view

経営戦略・AI活用・組織変革・ミドルシニアの智慧・事業家の判断軸。平日、毎朝、1本ずつお届けします。配信は、いつでも停止できます。

無料で登録する →
✉ ひとことで相談する