部下のやる気を、管理職個人の話術に任せている会社は、管理職を孤立させています。
しかも、多くの管理職が、やる気の引き出し方に悩んでいます。
シーベースは、2026年8月に、360度フィードバックを導入している企業の社員や経営者751名を対象に、調査を行いました。
結果は、2026年10月20日に公表されています。
管理職が課題や難しさを感じる業務の最多は、「部下のモチベーションを高める」で、26.4%でした。
次いで、部下の成長促進が19.0%、評価とフィードバックと育成のサイクルを回す業務が14.9%です。
経験を積めば解決する、という話でもありません。
マネジメント経験が5年以上の層でも、27.9%が、部下のモチベーションを高める業務を課題に挙げています。
経験5年未満の層は、部下の成長促進が24.4%で、モチベーションの23.1%を上回りました。
育て方に悩む点は、経験の長短にかかわらず、同じなのです。
一方で、比較的うまくいっている業務の最多は、部下との日常的なコミュニケーションで、31.7%でした。
管理職は、会話には手応えを感じています。
それでも、やる気を高める点には、難しさを感じているのです。
ただし、この調査の対象は、360度フィードバックを導入している企業に限られ、日本の管理職全体の傾向とは言えません。
私がコンサルタントとして受ける相談は、人と組織に関する内容が中心です。
中でも多いのは、社員のモチベーション、スキルアップ、評価制度の3つです。
理由は、売上を上げるのは、人だからです。
顧客と接するのは社員であり、社員のモチベーションや職場の雰囲気は、そのままお客様に伝わります。
不満を抱えたまま接客すれば、良い結果にはなりません。
最悪の場合は、お客様に不信感を与えてしまう可能性もあります。
社員が会社に希望を持てているかどうかも、売上に直結する重要な要素です。
経営者も、この領域に着手したいと考えています。
しかし、経営者が自力で取り組むのは、簡単ではありません。
そのため、外部のコンサルタントが、人と組織に関わる経験を生かして、問題解決に関わります。
その関わりが、結果として、売上と経営の継続につながると考えています。
私は、部下のやる気が上がらない原因は、本人の資質よりも、職場の条件にあると考えています。
顧問先や前職でも、「部下が指示された内容しかやらない」と悩む管理職に、会ってきました。
原因を分けて見ていくと、主に二つに行き着きます。
一つ目は、仕事に目標も裁量も無く、感謝や承認も届いていない点です。
単調な仕事自体より、この三つの欠如が、意欲を大きく下げます。
管理職が声をかけても、目標が無ければ、部下は何に向かって動けばよいのか分かりません。
二つ目は、提案を否定されたり、感情的に叱られたりした経験の積み重ねです。
続くと、部下は次のように感じ始めます。
「どうせ言っても無駄だ」
心理学では、何をしても変わらないと学んでしまう心理を、『学習性無力感』と呼びます。
叱責が続く職場では、部下は失敗を避けるために、提案そのものをやめてしまいます。
この心理に入った部下に、「やる気を出せ」と言うほど、逆効果になります。
では、管理職は何から始めるのでしょうか。
第一に、小さな目標から始めます。
いきなり高いハードルを課さず、本人が納得できる小さな目標を置き、達成感を積み重ねます。
段階的に目標を上げるこの方法を、シェイピングと言います。
達成感が積み重なると、次の挑戦に向かう意欲が育ちます。
第二に、意見を求めて、採用します。
「どう思う?」と尋ね、優れた点を褒めて採り入れると、自分の意見が尊重されたと感じ、当事者意識が高まります。
第三に、結果だけでなく、過程を認めます。
結果が出ない場合でも、陰の努力や、以前よりできるようになった成長を見つけて、言葉で伝えます。
しかし、これらを管理職の気合と技術だけに任せると、続きません。
属人的なやり方は、その人が異動や退職をした途端に、組織ごと崩れます。
さらに、評価制度が成果だけを見て、人を育てる行動を見なければ、管理職は育成に時間を割けません。
管理職自身が、経営者から承認も支援も受けていなければ、部下を支える余力は残りません。
そのため、やる気は個人の力量ではなく、仕組みで支えるべき課題です。
中小企業が先に整える仕組みは、三つあります。
第一に、定期面談を、日程から決めて実施します。
管理職の気分や忙しさで、面談が後回しにならないようにするためです。
第二に、役割と目標を書き出して共有し、進捗を毎月確認します。
目標が見えていれば、小さな成功も、本人と上司の双方が確認できます。
第三に、管理職の評価に、部下を育てる行動を入れます。
経営者が、育成に時間を使った管理職を評価して初めて、管理職は部下に時間を使えます。
仕組みは、管理職を縛るためではなく、管理職を孤立させないために作ります。
ただし、仕組みを作れば、管理職の関わりが不要になるわけではありません。
一日一回、「分からないところはないか?」と声をかけ、共感しながら聴く姿勢は、仕組みの土台として欠かせません。
あなたの会社では、管理職が部下のやる気を支える仕組みを、何から整えられるでしょうか。
部下の成長を願って悩む管理職と、それを支える経営者を、私は応援しています。
【出典】株式会社シーベース「管理職・次世代リーダー育成実態調査2026」第2弾(2026-10-20)、財経新聞掲載のプレスリリース(2026-10-20)


