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ブログ / AI経営の実践ガイド

第47話 NTTドコモの顧客対応。日本語なら通じる、は思い込み。AIの曖昧な答えは、問いの曖昧さから生まれる。

2026年9月29日 執筆:渡邉ひとし

AIに聞いてみたけれど、答えがぼんやりしていて使えない。

そう感じてAIから離れていく経営者は、少なくないはずです。

しかし、その原因はAIの性能ではなく、問いかける側にあるのかもしれません。

近年、人と人との会話では、言葉の短縮化が進んでいます。

特に10代の間で流行する隠語のような短縮言葉は、大人にはほとんど理解できません。

大人同士の会話でも、言葉は短くなっています。

それでも何とか通じているのは、聞く側が忖度し、配慮して補っているからです。

組織の中で起きるコミュニケーションの問題も、根は同じだと私は考えています。

相手への配慮が欠けているか、薄くなっているのです。

日本語だから通じていると思っていても、実際には相手の理解が追いついていません。

そのお互いの思い込みが原因で、社内では多くのトラブルが発生しています。

その感覚のままAIと会話すれば、何が起きるでしょうか。

前提を省いた短い言葉では、AIは問いの意味を十分に理解できません。

しかもAIは、問いかけた人に合わせて答えようとする性格を持っています。

分からない部分を都合よく補いながら、それらしい答えを返してきます。

つまり、曖昧な問いから曖昧な回答が出てくるのは、何ら不思議ではないのです。

この問題に、企業の現場でも手が打たれ始めています。

ITmediaは2026年9月27日、NTTドコモの顧客対応の取り組みを報じました。

ドコモは、オンライン手続きサポートに対話型のAIエージェントを導入しました。

それまでの「顧客に正しく質問させる」方式をやめ、AIが聞き返しながら情報を絞り込む方式に変えたといいます。

背景には、契約内容や料金プランの複雑化があります。

顧客が前提を省いて短い言葉で質問すると、従来のチャットでは意図をつかみにくかったそうです。

例えば「料金変更」とだけ入力された場合、AIが対象の回線や希望の時期を確認し、該当する手続きへ案内します。

この事例が示しているのは、短い言葉だけでは意図が伝わらないという事実です。

ドコモは、その前提に立って、AIの仕組み自体を作り変えました。

一方、中小企業の経営者が日々使うAIには、そこまでの仕組みは用意されていません。

だからこそ、問いかける経営者自身が、伝わる問いを組み立てる必要があります。

私の師匠(メンター)から、繰り返し教えられた言葉があります。

「日本語が通じると思って話しているかもしれないが、相手の理解力のレベルによって、お前の意図が伝わるとは限らないという意識を常に持っておけ。」

当時は、人と人との会話についての教えでした。

しかし今、この言葉はAIとの対話にもそのまま当てはまると感じています。

相手が人であれAIであれ、自分の意図は放っておいても伝わりません。

何のために聞くのか、どんな前提があるのか、何を判断したいのかを言葉にして初めて、相手は動けます。

AIに対して短い言葉で済ませる経営者は、社内でも同じ話し方をしている可能性があります。

部下が察して動いてくれるから、問題が表に出ていないだけかもしれません。

しかし、部下の察する力に頼った組織は、担当者が入れ替わった途端に指示が伝わらなくなります。

AIは、その察する力を人間ほどには持っていません。

AIの曖昧な答えは、その話し方の癖を映す鏡にもなります。

私は支援先の経営者に、ある考え方を繰り返し伝えてきました。

「曖昧な言葉は曖昧な行動につながる」「曖昧な指示や命令は、曖昧な結果に終わる」という考え方です。

その結果、支援先の経営者の中には、言葉の持つ意味や使い方を重要視するようになった方もいます。

言葉を選んで伝えるようになると、次第に社員とのコミュニケーションが活発になりました。

やがて社員は、指示を待つのではなく、自ら考えて動く自律型社員へと育っていきました。

言葉を丁寧に扱う姿勢は、社員を育て、組織を変える力を持っています。

AIへの問いかけも、同じ考え方で見直せます。

もちろん、すべての場面で長く丁寧な問いが必要なわけではありません。

慣れた相手との短いやり取りで、十分な場面もあります。

ただ、判断に関わる問いほど、前提と目的を省かずに伝える必要があります。

AI時代には、むしろ人間の「問いの力」や「人間力」が欠かせなくなっています。

問いの力とは、相手の理解力を想像し、伝わる形に言葉を組み立てる力です。

人間力とは、相手への配慮を忘れず、自分の意図を丁寧に届けようとする姿勢です。

AIが進化するほど、この二つを持つ人と持たない人の差は広がっていきます。

自分を磨かなければ、AI時代に取り残されるかもしれません。

今日から始められる工夫もあります。

AIに質問するときは、最初に背景と目的を一文添えてみてください。

あるいは、答えを出す前に不明な点を聞き返してほしいと、AIに頼んでみてください。

ドコモが仕組みで実現した聞き返すAIを、自分の問いかけ一つで近い形で再現できます。

その問いの磨き方は、社内での伝え方を見直すきっかけにもなるはずです。

あなたが最近AIに投げかけた問いは、相手の理解力まで想像して、組み立てた言葉になっていたでしょうか。

【出典】ITmedia「NTTドコモ、『正しく質問させる』をやめ、"聞き返すAI"で変える顧客対応」(2026年9月27日)

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

経営戦略・組織変革・AI活用を、実務と心理の両面から支援しています。中小企業の経営者の方には、訪問またはオンラインで、ご相談をお受けしています(初回は無料)。

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