第267話のテーマは『総合という守備範囲の広さ』です。
(ブログ=月水金の平日投稿です)
肥料から石油化学コンビナート建設まで
<住友化学>は1925年に<住友肥料製造所>として設立され1934年に<住友化学工業>に商号が変更されています。
1944年に<日本染料製造>を合併して染料や医薬品分野へと進出。
1958年にはエチレンや誘導品の生産を開始して石油化学分野へ進出しています。
1984年に<稲畑産業>と<住友化学工業>の医薬事業部を分離・統合して<住友製薬>を設立しました。
1971年からシンガポール政府との共同事業で石油化学コンビナートの建設を手がけていて1984年にシンガポールの石油化学コンビナートが操業を開始しました。
その後サウジアラビアの国営企業である<サウジ・アラムコ>と合弁で世界最大級の石油精製と石油化学の一体型コンプレックス(複合施設)を受注しています。
<住友化学>のビジネスモデル
2016年11月に農薬事業の研究開発拠点をブラジルに開設したと発表しました。
日本の化学メーカーの中でも農業化学部門や農業事業をもつことは珍しいようです。
アメリカのパデュー大学と農業分野で共同研究を始めたことを発表しました。
同じく11月に鶏のエサに混ぜる飼料添加物の「メチオニン」の販売に関して<伊藤忠商事>と提携する方針を表明しました。
世界で食料需要が増えるなか安定的な供給や調達先の確保を目指します。
「メチオニン」はアミノ酸の一種で食肉用の鶏のエサに混ぜて成長を促します。
2017年1月にアメリカの化学会社<トリンセオ>との合弁事業を解消し子会社化しました。
<住化スタイロンポリカーボネート>は家電などに使うポリカーボネート樹脂の生産・販売ですが子会社化後は他の高機能樹脂とポリカーボネートの混合剤を作るなど新製品開発を強化する考えです。
日本の化学メーカーは高度成長期に外資企業と組んだ企業がありますがリーマン・ショックや東日本大震災などで日本企業の拠点が海外移転を加速させたため大手の欧米企業にとって日本市場の重要性が落ちています。
2017年3月に有機ELディスプレーを搭載したスマートフォン向けに曲げられるタッチパネル部材の生産能力を3倍強に増やすと発表しました。
2018年1月までに1億台超の有機ELスマートフォンに供給できるようにします。
今後は液晶から有機ELへのシフトが進んでいくと考えています。
さらにテレビなどに使う50型以上の大型有機ELパネルの製造コストを大幅に下げる技術の実用化にめどをつけ2019年から量産する計画です。
開発したのは印刷による素子形成向けの高分子材料でインクジェットプリンターのように材料を吹き付けて素子を形成する方式です。
従来の製法より工程が少ないためコストが安くなります。
これらのことより情報電子化学部門の営業利益は2018年3月期に前期比倍増の見通しです。
2017年8月に<協和発酵キリン>から農薬事業を2018年3月をめどに買収すると表明。
農薬や農業資材を成長領域に位置づけていて健康・農業関連事業で2019年3月期に4400億円の売上を目指しています。
2017年11月には除虫菊から抽出する殺虫成分の製造で世界最大手のメーカーである<ボタニカル・リソーシズ・オーストラリア>を買収すると発表しました。
天然由来成分を活用した農薬である「バイオラショナル」に力を入れていて環境負荷が低く先進国で引き合いが強まる天然由来農薬に力を入れています。
2017年12月に化学大手のアメリカの<デュポン>と種子処理技術で協力すると発表しました。
種子処理は種子を薬剤で覆って発芽までに虫に食べられたり雑菌が付いたりするのを防ぎます。
お互いの技術と製品を持ち寄って処理技術の開発や商業化に取り組みます。
2018年4月には2018年3月期の連結純利益が11年ぶりの最高益で前期比47%増になったと発表しました。
2005年から取り組んでいたサウジアラビア国営の<サウジアラムコ>と組む石油化学コンビナートである<ペトロ・ラービグ>が好調に稼働し始めました。
それぞれ部門別に見ると……◉石油化学部門は基礎化学品や汎用素材などが利益を最も押し上げました。
◉エネルギー・機能材料部門はタイヤ用接着剤の原料や電池の絶縁材の販売が増えました。
◉医薬品部門は抗精神病薬ラツーダの出荷数量が拡大し糖尿病や高血圧向けの医薬品が伸びました。
◉健康・農業部門は養鶏の飼料添加物メチオニンの価格が前年同期より下がり減益でした。
ここにきて業績は好調ですが石油化学全般を扱う総合化学メーカーとして事業領域の広さが気になるところです。
事業の選択と集中をすることで世界のガリバー企業と闘う体力を今のうちに養成しておくことが<住友化学>のビジネスモデルに求められているように思います。
(次回ブログ=5月16日水曜投稿です)*注1 仮想現実:(VR= virtual reality)感覚を刺激することで現実のように知覚させる技術。


