【ビジネスモデルの企業事例】
第518話【ライオンのビジネスモデル】
今日も読んでいただき有難うございます。
組織変革コンサルタント
経営戦略コンサルタント
の渡邉ひとしです。
・原材料高騰
・人手不足
・物流コスト増大
・国内市場の成熟化
中小企業の経営者は
これらの課題に日々直面されています。
限られた経営資源で
どこに投資し
何を切り捨てるべきか。
その判断に
迷われている方も多いはずです。
中小企業も大企業も
日本の市場においては
同じ外部環境のもとで
懸命に営業活動をしています。
しかし
その対応策は必ずしも
中小企業にとって正解とは限りません。
今回は
ライオンの直近の経営判断を
時系列で追いながら
その戦略の妥当性を検証します。
大企業の課題や経営判断を観察して
自社の経営のヒントにしてください。
今日の企業事例は第518話
【ライオンのビジネスモデル】
*画像はイメージです
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ミッション、ビジョン、バリュー
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【社是】
「愛の精神の実践」を経営の基本とし
人々の幸福と生活の向上に寄与する。
【企業理念】
パーパス、ビリーフス、DNAの
3つで構成されています。
【パーパス:存在意義】
より良い習慣づくりで
人々の毎日に貢献する(ReDesign)
【ビリーフス】
Beliefsは、多様化が進む社会において
Purposeを実践するために
私たちが携えるべき「信念」であり
日々の考え方・行動・判断の拠り所です。
ライオンで働くすべての人は
常にBeliefsのもとに
暮らしの中に新たな課題を発見し
高いプロ意識を持って
仕事に取り組んでいます。
・価値は顧客が決める
・自分の心に従い、自ら動こう
・スピードは世界を救う
・化学反応を起こそう
・変化こそ、私たちを進化させる
【DNA:創業から受け継ぐ想い】
「愛の精神の実践」
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会社の沿革
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1891年10月に
小林富次郎氏によって
小林富次郎商店として創設しました。
1896年に
粉歯磨き『獅子印ライオン歯磨』
を発売しました。
1918年9月に
株式会社小林商店に改組しました。
1919年8月に
石鹸部門を分離し
ライオン石鹸株式会社を設立しました。
1940年9月に
ライオン石鹸株式会社を
ライオン油脂株式会社に改称しました。
1949年2月に
株式会社小林商店を
ライオン歯磨株式会社に改称しました。
1980年1月1日に
ライオン歯磨とライオン油脂が
対等合併しライオン株式会社を
発足しました。
2011年10月30日に
創業120周年を迎えました。
2023年4月3日に
本社を墨田区本所から
台東区蔵前のJPライオンビルディングへ
移転を完了しました。
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ビジネスモデルの企業事例
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2024年5月に
ライオン、ユニ・チャームなど14社が
日用品サプライチェーン協議会を
設立しました。
物流の「2024年問題」による
ドライバー不足が深刻化し
荷待ち時間削減や
トラックの積載効率向上が
業界共通の急務となったためです。
日用品のトラック貨物量は
物流全体の4.5%を占め
個社での対応には限界がありました。
従来の競争関係を超えて
物流データの連携や
行政への働きかけを
共同で行う体制を構築しました。
ただし競合同士の連携が
どこまで実効性を持つかは未知数です。
情報共有の範囲や
利害調整の難しさが懸念されます。
2024年10月に
投資ファンドのJACがライオン株式の
5%弱を数百億円で取得しました。
ジャパン・アクティベーション・キャピタル
は短期利益を追求する
アクティビストとは異なり
経営陣と協調して
中長期的な企業価値向上を
目指すファンドです。
時価総額2,500億~2兆円規模の企業を
投資対象としています。
JACの専門人材を活用し
特にアジアでの洗剤事業の収益改善と
国内ブランドの
選択と集中を推進する方針です。
ただし外部資本の介入による
経営スピードの変化に
組織が対応できるかが課題となります。
2025年4月に
歯科医院と連携したオンライン支援サービス
OraCo(オラコ)の提供を開始しました。
オーラルケア市場で
トップシェアを維持しているものの
商品力だけでは成長に限界があり
予防歯科の習慣化という
根本課題への取り組みが必要でした。
歯科指導を受けても
数日で内容を忘れる患者が多い
という実態がありました。
AIではなく
ライオン所属の歯科衛生士による
個別チャット対応という
労働集約的モデルを選択しました。
最大3カ月間の支援期間で
習慣化を促します。
しかし人的コストが高く
スケールアップには限界があります。
収益化までの道筋も不透明です。
2025年7月に
ベトナムで医薬品事業を手掛ける
メラップライオンの株式を追加取得し
36%出資の持分法適用会社から
完全子会社化しました。
ベトナムでは女性の社会進出が進み
生理痛などへの対処を含む
医薬品需要が拡大しています。
アジア市場での成長加速が
急務となっていました。
メラップライオンが持つ
ベトナム全土の薬局や病院への販路を活用し
歯磨き粉やボディーソープなど
日用品全般の販売拡大を図ります。
2030年までに海外売上高比率を
現在の36%から50%に
引き上げる目標を掲げていますが
ユニリーバなど現地で先行する競合との
差別化戦略が不明確です。
2025年9月に
小田原工場敷地内に約180億円を投じた
新医薬品工場を稼働させ
解熱鎮痛薬バファリンの
生産能力を約1.4倍に高めました。
国内の解熱鎮痛薬市場は
2022年の797億円をピークに
成長が鈍化しました。
一方で
インバウンド向け販売比率は
6%前後と堅調です。
また既存工場の老朽化と
コロナ禍での出荷制限経験から
供給体制の再構築が必要でした。
日本の小田原工場から
アジアの小田原工場へ
という位置づけ転換を図り
北東アジアへの輸出も視野に入れています。
しかし
各国の薬事規制への対応や
180億円という巨額投資の
回収計画の妥当性には疑問が残ります。
2025年10月に
AWSジャパンと協力しアリババの
生成AI基盤モデルQwenをベースとした
独自の大規模言語モデル(LLM)の
開発を開始しました。
製造現場では熟練技術者の退職により
長年蓄積された暗黙知が失われる
リスクに直面しています。
貴重な知識やノウハウの継承が
経営課題となっていました。
・研究報告書
・製品情報
・品質評価データ
など社内知見を学習データとして投入し
生産現場のDXと
競争力向上を目指します。
ただしAI開発・運用コストと
実際の生産性向上効果のバランスは
不透明です。
中国企業のAI基盤を使用する
セキュリティリスクも考慮が必要です。
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今日のまとめ
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ライオンのビジネスモデル転換は
典型的な
総花的戦略の様相を呈しています。
事業売却による
選択と集中を進める一方で
・180億円の工場投資
・海外M&A
・AI開発
・新サービス立ち上げ
など
あらゆる方向に資源を投入しています。
特に注目すべきは
これらの施策の時間軸のズレです。
工場投資の回収には10年単位
AI開発の効果測定には数年
海外展開の成果も
中長期的な視点が必要です。
しかし
株式の5%を取得したJACの存在により
短期的な成果への圧力も無視できません。
中小企業の経営者が学ぶべきは
『やらないことを明確にする』
重要性です。
ライオンのような資金力があっても
全方位戦略にはリスクが伴います。
まして
経営資源に制約がある中小企業では
より慎重な優先順位付けが不可欠です。
物流協議会のような競合との協調は
個社では解決できない構造問題への
現実的アプローチとして参考になります。
一方で大企業の戦略を
そのまま模倣することは危険です。
段階的な実行と
撤退基準の明確化が
中小企業には特に重要となります。
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*次回発行は12月4日木曜日の予定です。
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経営者ご本人では
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経営判断の質を高め
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<令和2年度迄>
中部大学 人文学部心理学科 非常勤講師
<令和元年度迄>
愛知産業大学 経営学部経営学科
造形学部デザイン学科・建築学科 非常勤講師
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<著書>
『ビジネスモデル虎の巻!』 (2019年)
『我が師と恩送りの人生(仮)』(2026年)
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